社会インフラ整備に積極的にコミットしない反面、ユーザー側への配慮には後発の強みを生かして積極的に取り組んでいるという。特にこだわるのが、「使いやすさ」の部分だ。
KDDIFeliCa推進室の小柳琢磨氏 |
「ここは後発の強みが生かせた部分ですが、(ドコモの)先行サービスの事例から、お客様が使いたいFeliCaアプリやサービスに到達できないケースが多くあることが分かりました。EZ FeliCaでは専用のポータルランチャーを用意し、利用する際のハードルを低くしています」(小柳氏)
本誌でも何度か触れたが、おサイフケータイの最大の課題はユーザーインタフェース(UI)における「ハードルのギャップ」だ。電子マネーや電子チケット、電子錠など様々なおサイフケータイサービスは、利用する際には“かざすだけ”という誰でも使える簡単なUIを持つ。しかし、利用する前段階に必要なFeliCaアプリの導入は難易度が高く、誰でも使えるものではない。結果として現状のおサイフケータイは、「携帯電話コンテンツ/アプリの利用ができるリテラシーを持つ」ことが利用の前提になるという矛盾を抱えている。
このUIの矛盾に対して、「使いやすさにこだわった」KDDIはどのようなアプローチをとったのか。
「初期導入の難しさという課題は我々も認識しており、(おサイフケータイの)サービスプロバイダーと協議し、できるだけ簡単なものを用意したいと考えています。ただ、この部分はキャリアの立場だけでは解決しきれない部分というのも現実です」
キャリアの立場で実現可能で、ユーザーにとって最も簡単な解決策もある。主要なFeliCaアプリをプリインストールしてしまうことだ。例えばドコモのおサイフケータイでは、ビットワレットが提供する「Edy」アプリがプリインストールされており、ユーザーはクレジットカード登録などの初期設定のみで利用が始められる。主要なFeliCaアプリがプリインストールされることは、ユーザーとサービスプロバイダーの両方にメリットがある。
「プリインストールに関しては、多くのユーザーのニーズになっており、実際に利用が多いものでないと難しい。EZ FeliCaでは専用のポータルランチャーを端末側のトップメニューに用意し、各サービスプロバイダーのFeliCaアプリダウンロードサイトまでの導線が短くなっています。基本はこれ(ポータルランチャー)によって、プリインストールに代わるものを考えています」
今後の部分でいえば、ユーザーの期待値が高く、実際の利用者も多いと予想されるサービスにJR東日本の「モバイルSuica」がある(7月11日の記事参照)。東京をはじめ首都圏のユーザーにとっては、モバイルSuicaはプリインストールされていて“あたりまえ”と感じるが、これは「非常に難しい問題」(小柳氏)である。
「(モバイルSuicaは)非常に重要で、利用の多さが見込める強力なサービスなのですが、ローカルなサービスなんですね。auは全国ブランドですから、『首都圏だけのサービス』をプリインストールしていいのか、という問題がある。これは他社(ドコモ)もどうするか悩んでいる部分だと思います」
1つの解決策としては、地域に根ざす交通系FeliCaアプリに関しては、各地域ごとに分けてプリインストールするという方法も考えられる。しかし、これは現在の携帯電話出荷体制では想定されておらず、コストの問題からも、実現は難しいという。KDDIとしては、将来的にポータルランチャーを地域別に分類し、ユーザーの居場所に応じて表示内容を変えるなど、「サーバ側でコントローラブルな部分での解決を検討している。ポータルランチャーのUI、使いやすさにはこだわっていますから、ここがEZ FeliCaの強みになります」(小柳氏)。
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