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連載
2005/08/12 10:24 更新

神尾寿の時事日想:
クルマ連携を深めるiPod。音楽ケータイの“クルマ対応”はどうする?

カーオーディオとiPodの連携が進んでいる。iPodの拡張性・汎用性の高さが生きている一例として、日本の携帯電話には学ぶべきところが多くある。

 8月4日、“iTunes Music Store日本上陸”のお祭り騒ぎの中で、アップルコンピュータが興味深い発表を行った。日産自動車、マツダ、ダイハツ工業の3社が2006年モデルのカーステレオで正式に「iPod連携」機能を採用するという。日本国内においては、すでにBMWグループのBMWとMINI、smart、アルファロメオが純正カーオーディオでのiPod連携を始めていたが、いよいよ国産車メーカーもiPod対応に乗り出すことになる。

 iPodの革命的な部分は多々あるが、その1つが音楽を再生する“場所”の垣根を取り払ったことだ。1台のiPodに納められた音楽コンテンツをヘッドホンで聴くだけでなく、カーオーディオや専用の高級外部スピーカーにも出力して、クルマや自宅でも楽しめるようにする。このための環境作りとして、拡張性・汎用性の高い「Dockコネクター」が採用されていた。

自動車メーカーは「iPod」に成功してほしい?

 特にカーオーディオ分野に対しては、アップルコンピュータはかなり重要視していた節がある。ある自動車メーカーの電子電装装備担当者によると、初代iPodが発売される以前から、アップルコンピュータから「デジタル音楽プレーヤー連携」についてアプローチがあったのだという。iPodは当初からクルマを重視していたようだ。

 一方、自動車メーカーやカーオーディオメーカーも、アップルのiPodに好意的だ。それはDockコネクターの「拡張性が高く、仕様管理が行き届いている」という特徴による部分が大きい。

 まず拡張性の部分では、Dockコネクターは曲の再生はもちろん、ライブラリリストの操作や接続時の充電などができる。さらに「iPod側の液晶に自社のロゴマークを表示させることもできる。細かい部分ですが、(ブランドを大切にする)自動車メーカーにとって重要」(自動車メーカー)だという。

 またDockコネクターは仕様をアップルコンピュータが管理しており、世代ごとの互換性が重視されている。北米を中心としたiPodのシェアの高さとあわせて、これは「カーオーディオとの接続ユニットを複数用意しなくていい」というメリットを生み出している。

 「(自動車メーカー/カーオーディオメーカーにとって)嫌なのは、複数の接続方式が乱立しているケースです。生産コストやサポートコストが跳ね上がりますから。その点、iPodは(自動車メーカーにとって重要な)北米でのシェアが圧倒的で、グローバルシェアも高い。世代間の互換性にも配慮されている。自動車メーカーとしては、(ソニーなど)他のデジタル音楽プレーヤーとの乱立状態になるより、iPodがさらに成功してくれる方が都合がいいのです」(自動車メーカー)

音楽ケータイは“クルマ重視”ができるのか

 デジタル音楽ブームは携帯電話にも波及してきている。

 すでに日本でも、auの「W31S」やドコモの「P901iS」など、デジタル音楽プレーヤー機能を前面に打ち出すモデルが登場。海外ではソニーエリクソンのWalkmanケータイ、ノキアやサムソンのHDD内蔵の音楽ケータイがこの分野を切り開こうとしており、モトローラのiTunesケータイも話題をさらっている。

 しかし、これらは基本的に「ケータイでデジタル音楽を聴く」というだけのスタンスであり、クルマやホームへの進出までは踏み込んでいない。つまり、旧来のポータブルオーディオの概念を携帯電話に融合させただけなのだ。

 確かに現在のシリコンオーディオプレーヤーの機能に留まるかぎり、「クルマ連携」まで意識する必要はないだろう。iPodシリーズも、シリコンオーディオの「iPod Shuffle」はDockコネクターを備えず、クルマやホームでの利用を想定していない。しかし、近い将来、音楽ケータイが“HDD内蔵”や“大容量メモリー搭載”の道へ進むとしたら、ユーザーの音楽ライブラリの多くが携帯電話の中に収納されることになる。それならばクルマ連携を視野に入れる必要が出てくる。

 だが、率直に言って、今の携帯電話業界のスタンスでは、自動車業界に相手にされないだろう。特に日本の携帯電話業界は「(携帯電話)業界内で外部接続端子の規格統一ができておらず、2Gと3Gで端子の規格を変えてくる、同じキャリアの3G端末でも細かな仕様が違うことがあるなど、メチャクチャな状態。国際標準規格のBluetoothへの取り組みも、欧米市場に比べて遅い。こんな状況だから、ハンズフリーフォンすら普及させられない」(自動車メーカー幹部)

 と、自動車メーカーの評判がすこぶる悪い。ユーザーが音楽コンテンツを楽しむ場所としてクルマは重要だが、音楽ケータイがカーオーディオと連携するには、携帯電話業界の旧弊を改める必要があるだろう。

音楽ケータイの接続方式を統一しては?

 これはまったくの私見だが、今後、携帯電話キャリアが「音楽ケータイ」に1ジャンルを築くのであれば、外部オーディオ機器との接続規格だけでも統一してはどうだろうか。理想的なのは、iPodの「Dockコネクター」のように、オーディオ出力/コントロール/充電/ハンズフリー通話のすべてができる物理的な接続方式である。特に充電は重要だ。キャリアとメーカーの枠組みを超えて、音楽ケータイの接続端子の仕様がまとまれば、自動車メーカーやカーオーディオメーカーも対応がしやすいだろう。

 また、今から物理的な接続方式の統一が難しいならば、Bluetoothのオーディオプロファイルを使うという手もある。これでは音楽再生中の充電ができないが、規格自体は国際標準化されている。自動車メーカー側も、すでにハンズフリーフォン用途でのBluetooth対応を積極的に行っているため、オーディオプロファイルへの対応はしやすいだろう。音楽再生をメインのニーズとしながら、Bluetoothハンズフリーフォンの普及も促せる。

 今、デジタル音楽のビジネスとカルチャーを切り開いているのは、紛れもなくアップルのiPodとiTunesである。日本の着うたフルや音楽ケータイが、そこから学ぶべきものは多々ある。クルマ連携はその1つだ。

[神尾寿,ITmedia]

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