海外メーカー製端末の“居場所”神尾寿の時事日想

» 2005年08月11日 11時33分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 8月10日、韓PantechグループがKDDI向けにPanteck&Curitel Communications製端末を提供することで合意したと発表した(8月10日の記事参照)。KDDIによると、同社製の端末はコストの安さが強みであり、価格競争力の高い低価格モデルに位置づけられる可能性が高いという。

 韓国メーカーの日本進出としては、今年6月13日にLG電子とNTTドコモの間でFOMA端末の共同開発の合意が発表されている。ドコモはLG電子端末をどのセグメントに投入するか明かしていないが、投入される時期や、複数の消息筋のコメントを総合すると、これが「低価格モデルを中心としたFOMAエントリーモデルの拡充」であることは間違いなさそうだ。ドコモはMotorola製のスマートフォン「M1000」を“ビジネスFOMA”として導入しているが、一方でエントリーモデルの拡充にも海外メーカー製端末を使おうとしている。

居場所を見つけるのが難しい海外メーカー製端末

 今回、KDDIも海外メーカー製端末の導入を明らかにしたことで、すでに導入済みのドコモとボーダフォンに並んで、既存の大手キャリア3社が海外メーカーに対して門戸を開いたことになる。しかし、海外メーカーの日本進出は一筋縄ではいかないのが実情だ。特に問題となっているのが、「ラインナップのどこに居場所を作るかが難しい」(キャリア関係者)という部分だ。

 例えば、ボーダフォンが採用したノキア製端末「702NK」は、海外市場においてはホワイトカラー向けのスマートフォン「Nokia 6630」である。しかし、日本のラインナップにおいては“エントリーモデル”という位置付けで、そのポテンシャルが日本のボーダフォンによってしっかりと訴求されているかというと疑問が残る。結果として、702NKは一部の量販店で「1円端末」として安売りされている状況だ。また、これから海外メーカー製端末を投入するドコモも、エリアプラスや一部のiモードサービス、おサイフケータイなどに非対応の海外メーカー製端末の位置付けには悩んでいるようだ。

 だが、ラインナップの位置づけが難しいからと、海外メーカー製の端末を「低価格なエントリーモデル」と「特殊なハイエンドモデル」という場所に無理矢理押し込んでいては、日本市場のためにならないだろう。

 海外メーカー製の端末の中には、ユニークな機能を持つものや、日本メーカーとは異なるユーザビリティ、デザイン、エルゴノミクス思想を持つものが多く存在する。そういったコスト以外の魅力を日本のユーザーに紹介し、理解してもらうことは、中長期的に見れば日本の携帯電話産業にとってプラスに働く。特に今後、積極的な海外進出を視野に入れなければならない日本の携帯電話メーカーにとって、日本市場で海外メーカーと切磋琢磨することは“よい刺激”になるはずだ。

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