BREWとは何か?(前編) 特集:BREW最新事情(2/2 ページ)

» 2005年08月09日 22時58分 公開
[平野正喜,ITmedia]
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「KCP」と「UiOne」でBREWの可能性が広がる

 さて、日本におけるBREWの進化は、2004年頃から2つの方向において一気に加速しはじめた。1つは、クアルコムがBREW上で動作するJavaVM(仮想マシン)提供の可能性に言及したことと前後して、それまで携帯電話のネイティブアプリケーションとして搭載されていた各種機能が次々と「BREW化」され始めたことである。2005年には、ブラウザやメッセージングソフトがBREWへ移植され、携帯電話上で動作するすべての機能をBREWアプリとして開発、提供することが現実となってきた。KDDIはこの方針を「KDDI Common Platform(KCP)」として推進することを発表し(2005年5月25日の記事参照)、新機種への搭載を急いでいる。

 そしてもう1つは、ユーザーインタフェースのカスタマイズ技術「UiOne」がBREWに統合されることだ。これをきっかけにして、BREWはそのサービス範囲に“アプリ以外”の要素を含め始めた。

 この「BREW uiOne」はユーザーの好みに合わせて携帯のメニューデザインや画面のテーマなどを変えることを容易にする技術で、ターゲットユーザーに合わせてメニューやグラフィックを追加したり、逆に制限したりすることもできる(6月3日の記事参照)。これにより、「BREWといえばアプリの技術」という説明は「狭義のBREW」とでも言わねばならなくなってきたのである。

 また将来は、逆もあり得る。例えば、ハードウェアにBREWだけが乗った携帯電話を販売店で購入し、そこで店員と相談しながら載せるべき機能を選び、操作や画面構成の好みを伝えれば、望みどおりの携帯電話が仕上がるというスタイルも夢ではない。小学校3年生用に「出会い系サイト接続制限つきブラウザ」と「スパムメール自動排除機能つきメーラー」を搭載し、代わりにアプリダウンロード機能を外した携帯電話や、弱視の方用の目に優しい携帯電話などがすぐできるかもしれない。「ツーカーS」的な最小機能の携帯に、事故防止の為のGPS機能だけを付加したモデルを欲しいという人も多いのではなかろうか。極端にいえば、アプリ配信もグラフィックも不要な携帯電話モデルを、BREWならば考え得るのだ。

 かと言って、BREWの意味や存在理由が拡散したわけではない。BREWはその誕生の段階から“コンテンツプロバイダ、半導体サプライヤー、携帯電話機メーカ、通信事業者、そして、エンドユーザが「協力」してケータイの機能を柔軟にカスタマイズしていけるシステム”を目指していたからである。

 このように、「2005年8月現在のBREW」は、本来の目標にいよいよ近づき始めた段階にあるといえる。後編では、現在のBREWでどんなことができるのかを見ていこう。


平野正喜

 プログラマ、システムエンジニアとして多くのIT資格を取得、資格教育やサイバーセキュリティを主とする技術者教育にも携わる。個人としては、オープンソースであるフリーソフトウェアを次々と開発・発表。2002年からはフリーの講士、コンサルタントとなり、技術力、提案力、表現力のある次世代プロフェッショナルの育成に燃えている。

 著書:ケータイビジネスを革新する技術BREW(ブリュー)―第三世代携帯電話の次を目指すクアルコムの戦略に迫る

 BLOG:ランドッグ・オーグ平野正喜事務所

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