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2005/08/04 11:32 更新

神尾寿の時事日想:
“エントリー向け”が巧みになったドコモ(後編)

デザインへのこだわりや多様なコンセプトでは901iシリーズをしのぐ701iシリーズ。エントリー向けとして盤石のラインナップ……といいたいところだが、気になる点もある。

 8月2日、NTTドコモがエントリー向けFOMA「701iシリーズ」と、プッシュ型情報配信サービス「iチャネル」を発表した。昨日の時事日想では新サービス「iチャネル」にフォーカスしたので、今日は701iシリーズからドコモのエントリー戦略を見てみたい。

エントリーモデルの本質を掴んだ701iシリーズ

 701iシリーズが先代700iシリーズと大きく異なるのは、端末ラインナップ全体が「90xシリーズの単純なデチューン」ではなくなっている点だ。エントリーモデルなので上位ラインナップよりスペックは劣るが、一方でデザインへのこだわりやコンセプトの多様さで901iシリーズを凌いでいる。

 誤解を恐れずに言えば、ドコモはこれまでエントリーモデルのラインナップ構築が下手であった。デザインやコンセプトで上位モデルとの差別化を強く打ち出さず、「機能を削っただけのエントリーモデル」に見えてしまっていたのだ。特にpreminiのような「企画端末」を持たないFOMAでは、エントリーモデルの充実という点で、ライバルのauに大きく水をあけられていた。

 これは携帯電話に限らないが、本来エントリーモデルは、機能・性能にこだわらない代わりに、デザインへのこだわりやコンセプトの多様さでは、上位モデルを凌ぐものを用意すべきである。auはこの点を早期から重視しており、au design projectの重要なミッションの1つが「エントリーモデルのデザインをよくする」ことであった。筆者は、au design projectがエントリーモデルに関わったことが、結果的にコンシューマー層でのau躍進に大きく貢献したと考えている。

 701iシリーズでは、外部デザイナー佐藤卓氏を起用したP701iD(参考記事12)、“上質な大人向け”を狙ったDOLCEを筆頭に、デザインへのこだわりでは901i/iSシリーズを超える内容になっている。またmovaの企画端末と異なり、同一世代ラインナップの中でのデザインの棲み分けも考えられている。FOMAの開発・供給体制が、エントリーモデルでのデザインニーズに応えられるようになってきた事とあわせて、この変化は重要なポイントだ。

 さらに各端末のコンセプトも、先代と比べればずいぶんと差別化され、ラインナップ全体がリッチになってきている。特にDOLCEとSA700iSはターゲットユーザーがはっきりしており、機能面での差別化もわかりやすい。またN701iも、これまで中庸でコンセプトがどこか“ぼんやり”としていたドコモ向けNEC端末の殻を破り、ターゲットとするユーザーの顔をはっきりとイメージできるものになった。

 701iシリーズの端末ラインナップは、エントリー向けのツボを掴んでいる。これが「iチャネル」というサービスと融合することで、ドコモのエントリー市場向け戦略は強力なものになるだろう。

“今なら”テレビ電話よりも、おサイフケータイを重視すべき

 701iシリーズには問題点も残されている。テレビ電話が標準搭載であることと、おサイフケータイ(iモードFeliCa)が標準搭載ではないことだ。

 ドコモはFOMAにおけるテレビ電話に執着しているが、今のところテレビ電話機能がエントリーモデルに標準搭載しなければならないほど一般的なニーズになっていないことは確かだ。以前のコラムにも書いたが、テレビ電話によるコミュニケーションはユーザーの意識変化と社会的コンセンサスの醸成が必要であり、「多くの端末にテレビ電話機能を載せれば使うようになる」というような単純な話ではない。普及に向けたプロセス、アプローチの仕方もドコモは間違えていると思う。

 さらにテレビ電話は、携帯電話のパッケージやコストへの悪影響も無視できない。テレビ電話搭載が前提になればインカメラとスピーカーホン機能が必要になり、本体サイズが大型化する。デザイン重視でスマートなストレート型端末を作りたくても、テレビ電話前提では作れないだろう。エントリーモデルならばコスト増大も無視できない。テレビ電話は、特にエントリーモデル向けにおいては、メリットよりもデメリットの方が多いのではないか。

 一方、おサイフケータイは利用可能エリアの整備が進み、その可能性は大きい。来年1月のJR東日本「モバイルSuica」開始や、kesakaシステムの「エントリーロック」販売開始など、日常的におサイフケータイを利用するシーンも間近に迫っている。おサイフケータイはハイエンドからエントリー層まで幅広くニーズを引き出せるものになっている。

 モバイルFeliCaユニットの搭載スペースやコストの問題はあるのだろうが、テレビ電話ではなくおサイフケータイを搭載する方が、ユーザーメリットになり、実際にその機能が使われるだろう。少なくとも今なら「テレビ電話よりもおサイフケータイを重視すべき」ではないだろうか。

 総じて魅力的となった701iシリーズだが、この点だけが合理性がなく、ちぐはぐだ。701iSシリーズでは、せめて「おサイフケータイ標準搭載」には踏み切ってほしい。

[神尾寿,ITmedia]

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