8月2日、NTTドコモはエントリー向けFOMA「701iシリーズ」と、プッシュ型情報配信サービス「iチャネル」を発表した。今回の発表で筆者が感じたのは、“エントリー向け”の端末とサービス作りにおけるドコモの巧みさだ。
まず注目なのは、プッシュ型コンテンツ配信サービス「iチャネル」だろう。これはコンテンツを自動配信する点や、その名前からauの「EZチャンネル」と類似するサービスと見られそうだが、本質は似て非なる存在だ。
iチャネルの狙いはコンテンツ利用ユーザーの裾野を広げる点にあり、実はこの部分はEZチャンネルも同様である。異なるのは、コンテンツ利用の“きっかけ”作りのためにリッチコンテンツとパケット料金定額制サービスを使うauに対し、ドコモは配信コンテンツとサービスのシンプル化を徹底している事だ。結果としてドコモのiチャネルは、プッシュ配信のパケット料がかからず、月額157.5円の基本料にプリセットコンテンツの情報料も含めてしまった。プッシュ配信サービスのコンセプトは、J-フォン(現ボーダフォン)が開始した「ステーション」に狙いが近いと言える。
ドコモのiモードは初期の頃から、イノベーターとアーリーアダプター層だけでなく、アーリーマジョリティとレイトマジョリティ層、すなわち市場のマスであるミドルユーザーをしっかりと意識した戦略を取っていた。しかし、iモードサービスの高度化により、ラガードと呼ばれるリテラシーの低いエントリー層はもちろんのこと、レイトマジョリティなどミドルユーザー層の一部にも「使い切れない」サービスになっていたのは、ドコモ自身が認めていた点だ。その膠着状態を覆す一手として、iチャネルが取った「シンプル化」のアプローチは極めて合理的だ。
一方、auのコンテンツ・メディア戦略は、イノベーターとアーリーアダプター層への強さでは、デジタル音楽ブームをしっかりと掴むなど、感度の高さでドコモの機先を制する場面が増えていた。今はアーリーマジョリティの一部にリーチしている段階である。しかし、auのコンテンツ・メディア戦略の課題と弱点は、エントリー層向けのコンテンツ・メディア戦略が「あまり上手ではない」ことだ。高速データ通信やパケット料金定額制などインフラやサービス面での優位性をアピールしようとするばかり、情報感度やリテラシーの低いユーザー向けにもリッチなサービスを訴求しようとしているように見える。
iチャネルで取ったコンテンツ利用促進のてこ入れは、ミドルユーザー層やエントリー層にも強いドコモの本領発揮とも言えるもので、かなり効果をあげると筆者は考えている。また、今回701iシリーズにあわせてiチャネルを投入した事は、ドコモのFOMAが「エントリー向け」をしっかりとフォローできる段階まで軌道に乗ったためと言えるだろう。
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