誠

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2005/08/02 10:14 更新

神尾寿の時事日想:
KDDI、東電、ライブドアの微妙な三角関係

パワードコムと合併に向かうとされるKDDI、ライブドアとパワードコムが提携したlivedoor Wireless――公衆無線LANサービスをめぐる3社の微妙な関係は、この夏気になる存在になりそうだ。

 8月1日、ライブドアが話題の公衆無線LANアクセスサービス「livedoor Wireless」の試験サービスを開始した(8月1日の記事参照)。日本では公衆無線LANアクセスは苦戦続きであるが、ライブドアがこれをビジネスとして成功させられるか。サービスの品質とともに気になる存在であるのは間違いない。

 ところで、この半月のモバイル業界内の動きで、興味深い「三角関係」ができているのにお気づきだろうか。KDDI、東京電力系のパワードコム、ライブドアの3社の微妙な関係である。

 livedoor Wirelessでは、ライブドアとパワードコムが提携している。公衆無線LANアクセスのバックボーンインフラと、アクセスポイント設置用の電柱が東電側のインフラであり、これをライブドアが活用することで安価かつ広範囲な無線LANアクセスエリアを構築するのが基本プランだ。

 一方、KDDIは、日経新聞など一部の報道で「パワードコムとの合併」が伝えられている(7月29日の記事参照)。こちらは正式発表ではないが、家庭用FTTHでNTT東西にやや水をあけられている両社が手を組むというのは十分に考えられるシナリオだ。

FMCに必要なピースが足りないKDDIと東電

 これらの動きを「FMC」を前提に見てみると、特にKDDIと東電の動きが、足りないサービスを補うものである事に気づく。

 まずKDDIだが、同社のau事業はコンシューマーを中心に好調だが、FMCを前にすると家庭用ブロードバンド、特にFTTHでの出遅れが目立つ。また同社は独自の公衆無線LANアクセス事業を持っていない。

 東電の通信事業では、所有するFTTHインフラ網は充実しているが、こちらもコンシューマー向けのFTTH事業ではNTT東西に出遅れている。また同社は携帯電話事業を持たず、大規模なモバイル事業としてはlivedoor Wirelessにインフラ協力するのみだ。過去のモバイル分野での失敗、現在もモバイルへの確たる足がかりを持たないことが、通信事業者としての将来への禍根になっている。

 今後のインフラレベルでのFMCで重要になるのは、「携帯電話」「固定網ブロードバンド」「公衆無線LANアクセス」の3つであり、NTT東西とドコモに接近の動きが見られるのは先のコラムで触れたとおりだ。両社が手を組めば、この3つを連携・統合させたサービスを投入することができる。

 一方、NTTグループが本格的なFMCに乗り出したとき、今のKDDIと東電は「必要なピースが足りない」状況にある。両社はコンシューマー向け固定網ブロードバンド事業でともにNTT東西に及ばず、KDDIは公衆無線LANアクセスを持たず、東電は携帯電話事業を持たない。もう1人のプレーヤーであるライブドアは、通信インフラ事業そのものが新規参入だ。KDDIと東電、そして東電のパワードコムと密接な関係を持つライブドアの公衆無線LANアクセスは、FMCを前提にすると、ちょうどいい補完関係にある。

 むろん、企業同士の合従連衡がジグソーパズルのような合理性のみで動く事はない。だが、KDDIと東電(パワードコム)、そしてライブドアの微妙な三角関係は、この夏、ちょっと気になる存在である事は間違いないだろう。

[神尾寿,ITmedia]

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