新「いちねん割引」で防衛体制をさらに強めるドコモ 神尾寿の時事日想:

» 2005年08月01日 10時20分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 7月29日、NTTドコモが年間利用契約「いちねん割引」を刷新。長期利用ユーザーのメリットを強化した(7月29日の記事参照)。詳しくはレポート記事に譲るが、これが来年の開始が予定されるMNP対策であることは、もはや言うまでもない。

 携帯電話の爆発的普及期は1995年から2000年の間であり、ドコモに限ればその後のiモードブームの影響で、2003年まで成長が著しかった。従来の「いちねん割引」と比べて、3年目以降から新プランの割引率の高さが目立つのは、ドコモの純増シェアが著しかった時期に契約したユーザーを囲い込む狙いだ。

 また、今回の恩恵を最も受ける5年目以降10年未満の契約者は、携帯電話をビジネス利用しているユーザーが多い層でもある。ビジネスユーザーは「ドコモの本丸」であり、ドル箱でもある。今回の新「いちねん割引」は、昨年のファミリー割引改訂と並ぶ、MNP対策の重要な一手だ。また、これが新料金プラン移行を促す役割を担っていること、今年11月1日からという適用開始のタイミングも、来年のMNPを鑑みると絶妙なサービス設定である。

 ドコモにとってのMNPは、“守りきれば勝ち”である。その点で、今後も既存ユーザー優遇の施策は次々と投入されるだろう。

 一方、auやボーダフォンは守るだけではMNPの意味がない。どう攻めるか、が重要になる。だが、長期利用契約優遇の対抗策である「他キャリアでの契約期間の引き継ぎ」は、ドコモ以外のキャリアでも否定的に見られている。

 「(ドコモに)対抗措置を取られることが自明で泥仕合になる。既存の(長期利用をしている)auユーザーも、他キャリアの長期利用ユーザーに同じ割引率が適用されたら納得できないのではないか」(KDDI関係者)

 auやボーダフォンも、ドコモと同様に長期利用ユーザーの優遇策を強化するだろうが、「契約期間の引き継ぎ」という劇薬は使わない可能性が高い。MNPに向けた戦いは当面の間、各キャリアが防衛体制の強化に終始する膠着状態のまま推移しそうである。

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