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2005/07/25 11:14 更新

神尾寿の時事日想:
公衆無線LAN事業の整理に見る、ドコモとNTT東西の接近

NTTドコモとNTT東西が合同で、公衆無線LANサービスを整理、共用基地局を運用すると発表した。NTT東西とドコモの接近、そしてこの中にNTTコムが含まれないことが意味するものは……?

 7月12日、NTTブローバンドプラットフォーム(NTT-BP)、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモの4社が共同でプレスリリースを発表した(7月12日の記事参照)

 内容は公衆無線LAN基地局の効率的な構築、運用・利用に関するもので、NTT-BPの「公衆無線LAN倶楽部」サービスが終了。同社はNTT東日本/西日本の「フレッツスポット」、ドコモの公衆無線LANサービス「MZone」用の“共用”基地局の保有および運用を行う。また、NTT-BPはこれまでNTT東日本の100%子会社だったが、株式譲渡により、NTT西日本が30%、NTTドコモが30%の株式を取得した。

無線LAN事業の接近はFMCへの準備か

 今回の発表はあくまで「インフラ整備における効率化」であり、ドコモとNTT東西の公衆無線LANサービス自体が相互乗り入れや統合したわけではない。公衆無線LANサービスが乱立し、設備投資効率がすこぶる悪かったNTTグループの状況を鑑みれば、合理的な整理と言えるだろう。

 しかし、将来への布石という点では、多少うがった見方をする事もできる。

 移動体通信業界の“次のトレンド”の1つはFMCであり、その中で無線LANを通じた固定網ブロードバンドサービスとの連携は重要だ。公衆無線LANアクセスはその中で街中の無線LANエリアであるが、将来的には家庭内ブロードバンドに繋がれたホーム無線LANも重要になる。コンシューマー向けのFMCを考えた場合、NTT東西が獲得するADSL/FTTHのフレッツユーザー層は「ドコモにとっても潜在的な重要性を持つ」のである。

 一方で、NTT東西にとっても、ドコモと手を組むことは重要だ。ADSL/FTTHの固定網ブロードバンドサービスは競争が激しく、今後の差別化要因として“モバイル”との連携は重要になる。すでにKDDIはが固定網からモバイルまでトータルでサービスを提供できる体制にあり、新規参入組の携帯電話サービスとしても、ソフトバンクの「Yahoo! BB」や、イー・アクセスのMVNOを通じた既存ISPのモバイル事業参入が控えている。NTT東西は他社との競争上、公衆無線LAN事業を通じてドコモと接近し、固定網ブロードバンドと携帯電話を連携させるための手札を用意しておく必要がある。

 筆者は今回の動きを、ドコモとNTT東西が手を組む“NTTグループ内の新たな結束”の氷山の一角だと考えている。3社はドミナント規制(編集部注:特定の通信事業者が、市場を支配することを防ぐための規制)に警戒しながらも、今後、さらに接近する可能性が高い。固定網とモバイルのサービスとビジネスがシームレス化する競争環境の中で、そうせざるを得ないからだ。

 また、今回の発表には別の注目ポイントもある。NTTコミュニケーションズが、蚊帳の外である点だ(7月12日の記事参照)。同社の公衆無線LANアクセス「ホットスポット」は、NTTグループ最大のスポットエリア数を持つ。しかし、今回の無線LAN基地局の共用化には名を連ねていないのである。ドコモとNTT東西の距離が縮まる中で、グループ内で競合領域の多いNTTコミュニケーションの立ち位置が難しくなってきている印象だ。NTTコミュニケーションズは法人向けモバイル通信サービス「Arcstar IP-VPN」で、DDIポケット(現ウィルコム)のPHS回線をMVNOで利用した事もあり(2002年9月30日の記事参照)、NTTグループ内で「スタンドプレーが多く、特に(NTT東西)地域会社にとっては敵対する部分もある」(NTT関係者)と見られている。

 ドコモとNTT東西の接近が今後も進めば、KDDIやソフトバンクなど外部のライバル他社から反発されるのは必至である。さらに、モバイルと固定網ブロードバンドが融合する枠組みの中に今後もNTTコミュニケーションズが入れなければ、コンシューマー向けの「OCN」や法人向けのデータソリューションサービスを多く抱える同社が、NTTグループ外の移動体通信事業者と手を組む“スタンドプレー”が起きる可能性はゼロではないだろう。

 ドコモとNTT東西の動向、NTTグループが目指すモバイルと固定網の融合の枠組み。これらには今後、注目しておく必要があるだろう。

[神尾寿,ITmedia]

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