2Gから3G、そしてその次へ──NECキーマンが語るワイヤレス業界のこれから(3/4 ページ)

» 2005年07月12日 13時01分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

通信の“容量”とは何か

ITmedia 通信をするときに、速さと容量というポイントがあると思うのですが、その点で3GやHSDPAと、WiMAXとはどう違うのでしょう?

古谷 そこは非常に複雑です。まず、容量で一番問題になるのは、周波数があるかないかです。周波数の使い方は総務省が決めていますね。1.7GHzとか、あの「周波数をもらう」という話題がよく出ていますが、携帯事業者に対して、10MHz幅とか20MHz幅とかの周波数をライセンスとして与えて、「あなたはここを使っていいですよ」とOKするわけです。もらった人は、そこを使って、なるだけ多くの収益を上げたいと考えます。そのことを容量と普通はいいます。

 その容量というのは、実は伝送速度とは別物なんです。例えばその10MHzをもらうと、通信方式にもよりますが、10Mbpsくらいの送信ができます。それを1人に当てはめれば一人で10Mbps、100人に当てはめれば1人あたり100Kbpsになります。でも、一人で10Mbpsでも、100人で100Kbpsずつでも、容量としてはこれは同じですよね。どちらがいいかは、どっちが儲かるかで決めるわけです。

 過去の無線通信では、電話のトラフィックが中心でした。電話のトラフィックというのは、8Kbpsもあれば十分運べるので、そういう人を何人くらい入れられるかを考えてきた。同時に(1人あたり8Kbpsの人が)100人か、200人か……という議論をしてきたわけです。

 しかしデータ通信が中心に話が移ってきている今は、1人あたりのトラフィックがさまざまです。使いたい人が100人いる場合に、100分の1(のトラフィック)にして送るのがいいのか、それとも1人1人にフルに与えて、順番に送るのとどっちがいいかというのが非常に難しいところなんですね。

 実は順番というか、早い者勝ち、という形にしたほうがいいんじゃないかという議論がある。そのために、その最大の伝送速度が何が一番いいのかが非常に大事になってくるんです。

 最大の伝送速度は、今後スーパー3Gだなんだということになれば、どんどん上がっていきます。しかし無線の容量は、総務省からもらうバンドの広さと、基地局の数が一番大きな決定要因であって、そこの伝送技術は2番目3番目くらいの重みしかない、というのが正しい認識なんです。

ITmedia WiMAXとHSDPAを比較した場合、伝送速度はどちらが速いですか?

古谷 WiMAXは最大伝送速度が50Mbpsと言っていますが、それは変わる余地があります。なので、最大伝送速度は(HSDPAより)速いです。

 WiMAXが速いと言われるのは何かというと、WiMAXは、周波数を20MHz幅もらって、50Mbps飛ばすといっているんです。これに対し、今W-CDMAは5MHz単位(の帯域)でもらって、10Mbpsで飛ばします。これで20MHzもらったらどうなりますか。20MHzもらっても、HSDPAで4倍の40Mbpsで飛ばす仕掛けはないんですが、10Mbpsを4本ということはできます。

 それを「1人しかユーザーしかいないところに50Mbps対10Mbpsなので、WiMAXはHSDPAの5倍(の速度)」というのはちょっと引っかかると思いませんか。そういう感覚です。容量的にいうと、4倍より5倍なので、少し多い。それくらいの差はあります。容量という観点ではそれほどすごくない。

ただ、条件が非常にいいところである人が使いたいというときに、速くなるということはありますね。

WiMAXと3Gの共存は?

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