モバイル向け「衛星放送」の意義と勝算──モバイル放送キーマンが語るワイヤレス業界のこれから(1/4 ページ)

» 2005年07月07日 13時24分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 モバイル市場に特化した衛星放送サービスとして2004年10月にスタートした「モバイル放送」(モバHO!)。サービスと同名の運営会社には、東芝を筆頭に90社(2005年6月)が名を連ねている。地上デジタル1セグメント放送などモバイル向け放送が乱立する中で、衛星を使うモバイル放送の意義と勝算はどこにあるのか。モバイル放送代表取締役社長の溝口哲也氏に聞いた。

モバイル放送代表取締役社長の溝口哲也氏

車でも船でも使える、パーソナルな衛星放送

ITmedia モバイル放送は、Sバンド放送衛星と地上のギャップフィラー(再送信装置)を組み合わせるという、大変ユニークな仕組みを持っています。携帯電話などモバイル機器向けのサービスとしては、他に地デジ1セグなどもあるわけですが、モバイル放送の特徴と強みになっている部分はどういったところでしょうか。

溝口 まず、大きなところでは「マルチチャンネル」と「マルチメディア」があります。前者はサービス開始当初から40チャンネルを用意しており、後者は映像と音楽、データ放送など複数のサービスを混在できることです。

ITmedia 放送をする上でのポテンシャルが大きく、柔軟であるということですか。

溝口 そうです。特にマルチメディアの面では、現在は映像8チャンネル、音楽・音声が30チャンネル、データは1チャンネルという複合的な構成になっています。

ITmedia 多チャンネルと、その編成での柔軟性は、いわゆる衛星デジタル放送の強みを受け継いでいるわけですね。

溝口 衛星デジタル放送自体は今では珍しくありませんが、その上でのモバイル放送の違いが「モバイル向け」であり、「個人向け」であるということです。モバイル向けというのは、人間はもちろんそうですし、クルマや電車、飛行機、船舶といったモビリティも含まれます。また個人向けという点では、人間は家の中など屋内にいることもある。屋内エリアを重視している(衛星デジタル放送)のは我々だけでしょう。

 衛星放送ですから当初から全国エリアを完成していながら、移動体や屋内エリアへの対応もしている。この点が従来の衛星放送との違いになります。

左から専用受信端末(東芝製、シャープ製)、車載タイプ、下がPCカードタイプ

地デジ1セグとは競合しない

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