ネットワークとサービスの品質向上でトータルの顧客満足度を上げる──KDDIキーマンが語るワイヤレス業界のこれから(3/4 ページ)

» 2005年07月05日 18時15分 公開
[本田雅一,ITmedia]

生活に密着した、新しいサービスを

ITmediaMNP導入時の他国の事例では、激しい価格競争に入った例が多いと思います。料金面での劇的な変化はあると予想していますか?

安田 サービス料金に対してユーザーは非常に敏感です。正直に言えば、価格での競争が厳しくなることは避けたいという思いはあります。今現在でも家族割の競争が激化しており、家族ぐるみで囲い込み、契約期間で縛ることで契約者を獲得しています。もちろん、最終的には顧客が選択するべきことですから、我々もライバルに負けないように取り組みます。

 しかし料金だけではないでしょう。楽しい、便利、信頼できるといった、生活に密着した形でのサービスを提供したい。携帯電話ユーザーは従来よりも、高齢者と若年者の両方向に年齢層が広がっています。安全のため、位置情報を知るために携帯電話を持たせるなどのニーズも増えてきました。従来のエンターテイメント路線も大切にしていきますが、それだけではありません。簡単に使える端末やサービス、ビジネスマンに気に入ってもらえる端末やサービスなど、対象者を拡げながらサービスメニューと端末ラインナップの充実を図っていくことで、顧客が感じる付加価値を高めていきたいと考えています」

ITmedia MNP導入のあとにはイー・アクセス、ソフトバンクなどの新規事業者の参入が見込まれています。料金競争よりもサービスの充実による契約者の獲得とのことですが、中にはサービスのアンバンドルなどで、ユーザーが料金メニューから品質そのものを選べる時代になるかもしれません。

安田 確かに、場合によっては基本料金を安くして通信インフラの基本部分だけを提供し、その上にサービスを乗せていくというやり方をしてくるかもしれません。我々は基本的にはサービスエリアとセキュリティでの差別化を考えていますが、ユーザーから見ると、それらがきちんとしているのは当たり前で、実際には差別化にはなりにくい。一方、インターネットが普及したことで、“ベストエフォート”の考え方が広がってきたという印象を持っていますが、PCの世界では許せても、携帯電話では同じインターネットを使ったメールでも遅延が許せないといった常識の違いがあります。ブロードバンドインターネットよりも、携帯電話のメールのほうが品質に対する要求が厳しいのです。それらに応えていくノウハウやインフラを我々は持っています。

 しかし、料金競争が激化してくれば、現在の品質をキープできない可能性も出てきます。そこまで競争が進んでしまうと、自ら望むわけではありませんが、ユーザーのニーズに合わせて“安いけれども品質の保証レベルは低い”といったメニューを考える必要も出てくるかもしれないですね。セキュリティ対策レベルを自分で選択するように、通信インフラの品質も自分で選ぶ。信頼性、品質、セキュリティこれらをメニュー化し、ユーザーが予算に応じて選択できるようにできないか。これは1つの課題でしょう。

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