FeliCaでピッ!──札幌大学の出欠席システム (1/2 ページ)

» 2005年07月02日 11時52分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 始業のチャイムが鳴り、学生がぞろぞろと教室に入っていく。よくある大学の光景だが、札幌大学の場合はちょっと違う。席に着く前に、必ず教室の扉のところに学生証をかざしているのだ。学生証をかざすと「ピッ」と音が鳴る。

 扉のところに設置されているのは、ドコモ・システムズ製のリーダー/ライター「WB-1R/W」。サイズは168×230×24ミリと弁当箱大の大きさで、FeliCaとRFIDタグに対応している。

 学生証にはFeliCaチップが埋め込まれている。学生証をかざすことでWB-1R/WがFeliCaの情報を読み取り、学生が何時何分に教室に入ったかを記録する。入室データはサーバに送られ、学生の履修情報と照らし合わせて、出席と判定する仕組みだ。学生は大学のWebページにアクセスすると、いつでも出欠情報を確認できる。

 札幌大学では、今年の4月からこのシステムを導入した。導入した理由、そしてその結果大学がどう変わったかを取材した。

札幌大学経営学部産業情報学科の大森義行教授

出欠をめぐる大学の試行錯誤

 記者が大学生だったころ、出席は講義の度に取るものではなく、数週間に1回とか、1年間で数回しか取らない講義も珍しくなかった。出欠の取り方も非常にアナログ。小さな紙を学生に配り、学籍番号と名前を書かせて回収する。教授が名前を読み上げて、学生が返事することもあった。学生の数が多い講義では、授業に出ない人の出席をほかの人が申請する“代返”を、よく見かけたものだった。

 「大学側にとっても出欠を取るのは大きな負担なんですよ。200人のクラスで20分くらいかかってしまう。教員は講義時間を取られてしまうし、そのあとで処理をする事務の人たちも大変なんです」と話すのは、札幌大学経営学部産業情報学科の大森義行教授。このシステムを導入した責任者だ。

 より時間がかからず、正確な出欠を取るために──今回導入したFeliCaを利用したシステムに至るまで、札幌大学では今までいくつかの試みをしてきたという。

 2004年には日立製作所と共同で、ミューチップを貼った学生証を使って出席をとる実証実験を行った。磁気カードの学生証の裏にミューチップを貼り、学生の出席を取る。出席情報を学生にメールで送信するというものだ。この実証実験の結果を受けて、非接触ICカードを利用した出欠システムの導入が決まった。

ドコモ・システムズ製のWB-1R/W。FeliCaとRFIDタグ(Mifare、i・Code、Tag-Itなど)の両方に対応している。ACアダプタのほか単三型ニッケル水素充電池4本でも動作する。イーサネットのポートとCFスロットを持っており、LAN環境のないところでも利用できる
紙に名前を書く出席カードから始まり、電算処理ができるマークシート方式を導入。しかし当初の用紙は1枚に5人まで書き込めたため「4人まで代返できてしまう」と問題になり、1枚1人のシステムに切り替えられた。またマークシートは筆跡が残らないため、やはり代返を心配する声が多かったという

携帯の可能性に着目

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