日本の携帯電話は“キーボード”にも柔軟な発想を神尾寿の時事日想

» 2005年06月27日 09時46分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 6月24日、Samsung ElectronicsがQWERTY配列キーボードを搭載した携帯電話「SCH-i730」を北米向けに発売した(6月24日の記事参照)。同モデルはOSにMicrosoftの「Windows Mobile」を採用。昨今、PDAからの「乗り換え組」が著しいモバイルワーカー向けの端末だ。

 北米市場や欧州市場で、この手のPDAライクな「スマートフォン」など高機能端末に一定のニーズがあり、ホワイトカラーに受け入れられていることについては、本コラムでも何度か紹介した(2月28日の記事参照)。日本市場ではコンシューマー層が携帯電話の高機能化を牽引したが、欧米ではビジネス層から高機能化のニーズが立ち上がっているようだ。

 欧米のスマートフォンは、成り立ちから言っても“日本市場のハイエンド端末”とは一線を画すが、その中で筆者が注目しているのが、入力環境の柔軟性と進化である。

 日本の携帯電話はあくまで「電話機の延長線上」にあり、メールやコンテンツの利用が日常的になった今でも文字入力は電話のスタイルを踏襲したダイヤルキーを使う。これはコンシューマー層に幅広くデータサービスを利用してもらう狙いがあり、また携帯電話の小型・軽量にも一役買ってきた。

 一方、PDA的なホワイトカラーのビジネスツールを狙った欧米の高機能端末は、モバイル機でも高速・快適な入力環境の構築を前提にしている。ホワイトカラー向け高機能端末の草分けである「BlackBerry」シリーズがQWERTY配列キーボードを採用し、人気を博したのは記憶に新しい。実際、BlackBerryは北米のホワイトカラーに“親指族”を増やし、日常的にBlackBerryを使う人という意味の「Crackberry」なる造語も生まれたという。

 BlackBerryヒットが呼び水になり、携帯電話向けQWERTY配列キーボードが広がった。またBlackBerryのメーカーであるカナダのResearch In Motionは、小型ながら使い勝手を損なわない新方式の20ボタン入力システム「SureType」をリリースしている(9月21日の記事参照)

 従来型のボタン配列でも、ノキアの「Nokia 6630」(ボーダフォンでは702NKとして販売)など、キーボードとしての入力のしやすさをよく考えたものもある。Nokia 6630ではボタンが下方向にラウンドして配置され、さらに本体の形状でも下半分がふくらむ“下ぶくれ”になっている。このため本体背面に両手の中指をかけ、2本の親指でキー入力する「2本打ち」がしやすいのだ。電話としてのスタイルを維持しながら、メール入力をすばやくする工夫がしっかりとされたキーボードだと思う。

 日本は若年層や女性層の牽引により、世界でも随一のコンシューマー層でデータサービスが活用される国になった。

 しかし、これから先、さらにモバイルデータサービスの利用を広げていく上で、効率よく使いやすい携帯電話"キーボード"の模索が必要である。これはコンシューマー層はもちろんだが、ビジネス層でのモバイル活用を促進する上で重要なことである。

 もはや携帯電話のボタンは、ダイヤルするためでなく、文字をタイプするためについている。そろそろ柔軟な発想が必要だろう。

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