一方、入力側UIで興味深かったのが、圧力センシング技術を応用したUI「PreSense」のデモンストレーションだ。同研究のテーマは人間が本来持っているアナログ的な感覚をデジタル操作に持ち込むことであり、マウスやジョイスティックなどが実現してきた仮想化・象徴化の入力系UIを発展させるものだ。その点で、目指すべき方向性は以前コラムでも紹介したソニーの「NFC(Near Field Communication)」に近い。
PreSenseでは、接触・圧力センシング技術を使ったパッドを使い、指先の微妙かつ自然な動きでデジタルデータを「触る」ことができる。PreSenceデバイスにはフォースフィードバック機構があり、デジタルデータに触れた感触や、動かした時の手応えが指先に伝わるインタラクティブ性もある。
筆者も体験したが、デジタルデータに「触って動かす」というUIはマウスなど旧来UIよりも直感的であり、感動もある。
「PreSenseは、PCはもちろん、デジタル家電やモバイル端末にも最適なUIであると考えています。将来的には液晶画面にPreSense機構を内蔵する事も考えています」(暦本純一・CSLインタラクションラボラトリー室長 理学博士)
入出力系以外では、デジタルデバイス同士の接続に"ケーブルで繋ぐような物理的な明快さ"を持ち込んだ研究「tranStick」がユニークだった。
周知の通り、無線LANなどワイヤレスネットワークの構築や、離れた場所で仮想的なVPNネットワークを構築するのは、一般ユーザーには難しい作業だ。
「仮想的でセキュアなネットワークを、AV機器のケーブルを接続するくらい簡単な操作で構築できないか。そこから生まれたのが、tranStickです」(綾塚祐二・CSLインタラクションラボラトリーアシスタントリサーチャー)
tranStickではメモリースティックなど物理的なストレージメディアに「鍵情報」を保存し、対応する鍵を差し込んだ機器同士が自立的に仮想ネットワークを構築する。セキュリティも自動的に確保されるため、接続インフラは有線・無線を問わず、インターネット経由でもかまわない。ユーザー側から見たら、「繋ぎたい機器同士に、同じ色の鍵(メモリースティック)を指すだけ」だ。
「PCネットワークはもちろんですが、将来のホームネットワークでも応用できる研究だと考えています」(綾塚氏)
tranStickでは鍵情報を保存するメモリーデバイスは、メモリースティックに限らないという。今後のホームネットワークを考えると、「デジタル家電のネットワーク設定・セキュリティ管理を誰がするのか」は重要な課題だ。そこに物理的な明快さを持ち込むtranStickの試みは、興味深いものだろう。
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