2005年はEdy飛躍の年──ビットワレットインタビュー(後編)神尾寿の時事日想

» 2005年06月13日 21時32分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 事業者とユーザー双方のメリットが認知され、加速度的に普及している電子マネー「Edy」。将来に向けて、Edyを推進するビットワレットではどのようなビジョンを持っているのであろうか?

 前編に引き続き、ビットワレット執行役員である宮沢和正氏のインタビューをお届けする。

郵貯カードに対応することで高齢者にリーチできる

 2004年度を通じて利用者数と採用事業者を増やし、順調に普及するEdyだが、宮沢氏は「インフラと呼ぶには、まだ発展途上」と語る。

 「(インフラとなるには)Edy対応店舗数は5万店は超えなければならない。今はまだ2万店ほどですから、さらに増やさなければ。その点で考えても、2005年度は重要です」(宮沢氏)

 採用店舗の増加には、ユーザー側のEdy普及による後押しが欠かせない。2005年は先行するドコモだけでなく、au、ボーダフォンがFeliCa携帯を投入、Edyに対応する予定だ。「Edyの3キャリア対応が、採用店舗を増やす1つのポイントになると考えています」(宮沢氏)

 「またユーザーの裾野を広げるという点では、金融系カードへのEdy機能搭載も重要です。すでに東京三菱銀行がEdy機能に対応にしています。また日本郵政公社もICカード化を予定していますが、ここでもEdy機能搭載を検討していただいています。例えば郵貯カードは7千万枚の発行実績がありますので、ものすごいインフラですよね。携帯電話と金融系カード、両方からのアプローチでユーザーへの普及を図っていきます」(宮沢氏)

 郵貯カードのEdy対応は、規模以外にも注目すべき点があるだろう。

 それが高齢者や地方在住者へのリーチ力だ。先のアサノの事例でわかるとおり(5月30日の記事参照)、電子マネーは高齢者との相性がよい。また地方の郊外にいけば、都市銀行が存在しない場所は多い。高齢者や地方在住者にとって郵便局は身近な金融機関であり、郵貯カードのEdy採用は、それらのユーザー層や地域での電子マネーや将来のFeliCa携帯普及の“地ならし”になる可能性がある。

Edyのメリットを様々な業種に拡大する

 ビットワレットでは、FeliCa携帯や金融系カードのEdy搭載に歩調を合わせて、Edy採用店舗の拡大に今後も力を注いでいく。従来どおりコンビニエンスストアやスーパーマーケットなど小売り事業者への展開はもちろん、それ以外の業種にも広げていく方針だ。

 「キャッシュレスのメリットは、ゲーム機などアミューズメント分野や自動販売機でも大きい。これらはメンテナンスコストの削減だけでなく、価格がフレキシブルになる事でビジネスの拡大が考えられます。

 他にもユニークな導入例として病院など医療施設があります。すでに横浜労災病院や大阪医科大学附属病院などいくつかの病院でEdyを導入していただいていますが、そこでは(電子マネーの)衛生面のメリットをご評価いただいています」(宮沢氏)

 このようにEdyは街中の小売り事業者はもちろん、幅広く電子マネーのメリットを訴求し、「すべてのプレーヤーが(Edyの)メリットを享受し、WIN=WINの関係を築く」(宮沢氏)ことを念頭に置いているという。

FeliCa携帯+Edyが実現するメリット

 Edyはおサイフケータイ登場当初からFeliCa携帯に対応しており、au、ボーダフォンのFeliCa携帯対応も早々に決めている。携帯電話への取り組みでは、ライバルであるJR東日本の「モバイルSuica」をリードしている。

 「FeliCa携帯とカード型の最大の違いは、オンライン機能を使ったサービスを実現できることです。(その中でも)わかりやすいのがオンラインチャージで、すでにクレジットカードでは実現していますが、今後はイーバンクや三井住友銀行の事例のように銀行口座から直接チャージできるサービスも増えるでしょう。FeliCa携帯がパーソナルなATMになり、入金から決済まで完全なキャッシュレスになります」(宮沢氏)

 周知の通り、おサイフケータイ上でのEdyチャージは最初にクレジットカード番号など金融情報を登録すれば、あとはパスワード入力で簡単にチャージができる。「いつでもどこでも」チャージできる便利さは、一度使ったらカード型FeliCaに戻れないメリットだ。

 「また、これはすでに始まっているのですが、非対面取引での利用を想定した『Mobile Edy』サービスもFeliCa携帯のメリットです(6月10日の記事参照)。こちらはネットショッピングはもちろん、カタログを使った通信販売や、スカパー!のPPV購入など放送コンテンツの決済でもご利用いただいています」(宮沢氏)

 Mobile Edyで物品を買うと、請求メールが携帯電話に送付される。請求メールからFeliCa携帯内のEdyアプリを呼び出す仕組みになっており、ユーザーは1クリックで携帯電話内にチャージされたEdyを使って支払いができる。ECや通販で利用できるのはもちろんだが、セットトップボックスなど受信機側にFeliCaリーダー/ライターを搭載しなくても、Edyを使った放送コンテンツへの課金が可能というのは、将来的なポテンシャルが大きいだろう。

OpenPOSでEdyを標準化。海外進出も視野に

 Edyの将来に向けた展望の中で、重要な位置を占めるのが“海外市場への進出”も視野に入れたEdyのインフラ化である。その布石は昨年の段階で打っているという。

 「今後のインフラ化、海外進出を視野に入れますと、重要なのは(Edyの)標準化対応です。Edyは昨年、マイクロソフトのWindows POSに採用されました。またOpenPOS協議会にも働きかけ、こちらで世界標準の認定も受けました。OpenPOSで認定され、市場の7割を占めるWindowsPOSで決済標準の1つとして採用された事は、海外進出をする上で重要な事です」(宮沢氏)

 しかし、海外では日本に比べてクレジットカード利用が浸透し、根付いている。その中で電子マネーが受け入れられる可能性はあるのだろうか。

 「普及シナリオとしては、まずアジアからという事になるでしょう。例えばアメリカでは1ドル単位でクレジットカードが使われており、プリペイド型の電子マネーが入り込む余地は少ないでしょう。一方、中国市場はクレジットカード利用がまだ進んでいません。また(日本同様に)高機能携帯電話も普及する素地がある。そういった点でEdyの普及をしやすいと考えています」(宮沢氏)

 FeliCa携帯の登場と普及により、その利便性が増し、活用範囲が広がるEdy。2005年は電子マネーの普及にとって重要な年になりそうだ。

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