2005年はEdy飛躍の年──ビットワレットインタビュー(前編) 神尾寿の時事日想

» 2005年06月10日 16時33分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 電子マネー「Edy」の普及に拍車がかかっている。Edyユーザーは順調に増え続け、新たな事業者の採用、新規ビジネスといったニュースが毎日のように飛び込んでくる。2001年にスタートしたEdyは、今、大きな飛躍の時を迎えている。

 Edyの現在、そして今後の展望について、ビットワレット執行役員である宮沢和正氏に話を聞いた。

広がる認知、加速度的に伸びる普及

 Edyで特に注目なのが、加速度的な成長である。

 2005年5月にはカード型とFeliCa携帯側とであわせて発行枚数1000万枚を突破。2004年4月からの1年間で、約2.5倍の普及枚数急増を実現している。また2005年4月の月間取り扱い件数は約930万件であり、前月比30%増、前年同月比2.8倍の伸びを示している。

 「特に昨年7月以降、2004年後半の(普及枚数の)伸びは著しいものがありました。カードとFeliCa携帯の両方でユーザー数が増加し、それを受けて『電子マネーは本当に普及するのか』と様子見をされていた事業者の採用に弾みがついた。Edy全体に加速度がついています」(宮沢氏)

 都内や地方都市に在住の読者ならば、肌感覚でもEdyが使える店舗が増えた事に気づくはずだ。Edyは“ニワトリと卵”のジレンマを脱し、ユーザーと対応店舗が共に増大するポジティブスパイラルのフェーズに入っているという。

 「認知度の拡大という点で、やはりコンビニエンスストアの対応が増えたのが大きいですね。今年4月にはサークルKとサンクスに全国規模で採用していただき、6300店舗が一気にEdy対応となりました。生活動線の中にEdy利用可能店舗が増えることで、身近に感じていただけるシーンが増えたのだと思います」(宮沢氏)

「実利の認知」が、Edy採用を推進する

 サークルK/サンクスはもとより、全国展開する企業が新たな決済システムを導入するとなれば、当然ながらコストと労力が必要になる。その中で、なぜEdy採用が増え続けるのか。

 「Edyは『目新しさ』で選ばれるのではありません。Edy導入が売り上げ拡大や、新規顧客の獲得につながる。そういった実利の部分が(先行事例で)実証され、認知されてきたからです」(宮沢氏)

 Edyの収益拡大効果については、先のアサノの事例(5月30日の記事参照)でもリアルに語られている。Edyなど電子マネーが顧客単価を増大させる効果が、実証的に認められてきているのだ。

 さらに宮沢氏が重要だとするのが、CRM(Customer Relationship Management)の要素だ。EdyではEdy IDに対して事業者ごとのポイントIDを対応させる事により、1つのEdyに複数のポイントプログラムを内包できる。

 「ポイントプログラムではANA様のマイル加算のように1社で連携させる事も可能ですが、(大阪の)心斎橋筋商店街のように異なる複数店舗が1つのグループとして同一のポイントプログラムに参加するという使い方もできます。

 これまで中小規模の事業者では、大手のポイントプログラムに対して規模の上で不利でしたが、Edyの仕組みならばシステム構築における負担は少ない。Edy店舗端末の導入など原資は必要ですが、商店街のような(中小規模店舗の)グループで、大手に負けないポイントプログラムを立ち上げる事ができます」(宮沢氏)

 また、ANAのマイルシステムのように蓄積ポイントをEdyバリューと交換する仕組みを持てば、利用者は獲得ポイントの利用場所を自由に選べるようになる。これは一見すると「獲得ポイントを自らの店舗で使ってもらう」というポイントプログラムの導入目的に反するようだが、

 「(獲得ポイントの)利用可能場所が限定されなければ、ユーザーのポイント獲得・蓄積に対する意欲が高められます。実は中小規模の店舗チェーンにとっても、メリットの大きいものなのです」(宮沢氏)

 ユーザー側にとっても、地域の数店舗でしか使えないポイントが、一定の交換率で全国の他事業者でも利用できるEdyになる仕組みは、選択肢の拡大という意味で大きなメリットだ。

 Edyは電子マネーとポイントプログラムの柔軟さが「実利」を生む仕組みになっている。Edyユーザーの増大はもちろんだが、この実利の認知が事業者側の採用意欲を促進していると言えるだろう。

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