HSUPAチップも。Qualcomm、W-CDMAチップ増加中BREW 2005 Conference(2/2 ページ)

» 2005年06月02日 20時36分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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ドコモとQualcommは「MSM6250」で、チップとネットワークの互換性テストを行っており、その後の製品でも互換性が継承される(2004年10月7日の記事参照)

 HSDPA関連のチップを、もう少し詳細に見ていこう。3GPPで定めているW-CDMA規格は、現在ドコモやボーダフォンが採用しているRelease.99(Rel.99)のあと、Release.4、Release.5、Release.6と進化していく。Release.5は2004年に概要が固まり、HSDPA規格はここに含まれている。

 HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)はRelease.6内で議論されている規格で、上り方向の通信速度を1M〜1.8Mbpsに高速化するものだ。

 HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)は、下り方向の通信を高速化する技術で、最大14.4Mbpsを実現する。ただしRel.99のW-CDMA(最大384Kbps)とは通信方式が異なるため、速度は速いが環境に影響を受けやすい。実効速度では最大で4.5Mbps程度と見られている。

要素 Rel.99(W-CDMA) HSDPA
データ速度 静的 動的
パワーコントロール 動的 静的
W-CDMAとHSDPAの概念の違い。パワーをコントロールしていずれの端末にも一定の速度が出るよう調整するW-CDMAに対し、HSDPAではデータ速度が可変となる。ソフトハンドオーバーを行うW-CDMAに対し、ハードハンドオーバーを行うのもHSDPAの特徴

 HSDPAは全体で12のカテゴリーに分かれており、ユーザーがシェアできるコード数や符号化変調方式が異なっている。端末に搭載するHSDPAチップが、どのカテゴリーをサポートするかで最大通信速度も変わってくる。

 なお、HSDPA導入を予定する各社は3.6Mbpsからのスタートを想定しているところが多い(3月24日の記事参照)

カテゴリー コード InterTTI 変調 データ通信速度
1 5 3 QPSK/16QAM 1.2Mbps
2 5 3 QPSK/16QAM 1.2Mbps
3 5 2 QPSK/16QAM 1.8Mbps
4 5 2 QPSK/16QAM 1.8Mbps
5 5 1 QPSK/16QAM 3.6Mbps
6 5 1 QPSK/16QAM 3.6Mbps
7 10 1 QPSK/16QAM 7.2Mbps
8 10 1 QPSK/16QAM 7.2Mbps
9 15 1 QPSK/16QAM 10.2Mbps
10 15 1 QPSK/16QAM 14.4Mbps
11 5 2 QPSK 0.9Mbps
12 5 1 QPSK 1.8Mbps
Inter TTIは、時間軸で分けた通信を行うブロックをどの程度連続して利用するかを示す(3月24日の記事参照)。Inter TTI3は、ブロック3つおきに利用。コード数は規格上5〜15が利用可能だが、基地局側の対応状況にも依存する。カテゴリー11と12はノイズ耐性が強いQPSKのみを利用するため、環境変化に強く安定した速度が出る

 QualcommのHSDPAチップでは、「MSM6275」がカテゴリー11と12をサポートし、最大通信速度は1.8Mbps。「MSM6260」はカテゴリー11と12に加え、カテゴリー1〜6をサポートし、最大通信速度は3.6Mbpsとなる。「MSM6280」ではさらにカテゴリー7と8をサポートし、最大7.2Mbpsを実現する。「MSM7200」は7.2Mbps以上をサポートする予定だ。

 さらにQualcommのHSDPAチップでは、さらなる高速化と安定化を図るオプション規格にも対応する予定だ。

 Release.6のオプションとなる予定のReceive Diversityは、2つのアンテナから同時に受信した信号を合成。データ通信速度をアップさせる。HSDPAに理論的に似た1X EV-DOでは既に導入されており、KDDIの1X WIN端末ではReceive Diversityが標準となっている(2004年12月2日の記事参照)。MSMチップでは「MSM6275」を除いて対応予定だ。

 Equalizationは、電波の干渉を低減させる仕組み。定常的な干渉波を感知して反転させるなどの処理で干渉をキャンセルする。Release.6で協議中だ。MSMチップでは「MSM6280」「MSM7200」が対応予定となっている。

 Receive DiversityとEqualizationをセットで使うことで、特定条件ではあるが約2倍のパフォーマンスアップも見込まれる。

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