携帯電話キャリアは、いつまでクルマを軽視するのか神尾寿の時事日想

» 2005年05月24日 15時20分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 各キャリアの2005年夏モデルが続々と発表された。まだ、数機種の端末が発表待ちの段階だが、夏商戦に向けての各キャリアの陣容が見えてきた。

 毎年、夏商戦はマイナーチェンジという位置付けであり、地道な機能向上や将来に向けての実験的なサービス投入が行われる。それは今夏も変わっていない。その視座で見ると、ドコモのモバイルFeliCa標準搭載や、auのEZテレビ投入は示唆的だ。これらについては、別の機会に本コラムでもテーマにしたいと思う。

 一方で、今回の新端末で失望し、各キャリアに苦言を呈したいことがある。Bluetoothの対応が、あまりに貧弱なことだ。

 改正道路交通法の「運転中における携帯電話利用取り締まりの強化」施行にあわせて(2004年10月28日の記事参照)、自動車メーカーは純正カーナビにおけるBluetooth対応を推進している。特にトヨタ、日産、ホンダの3社は、Bluetoothをハンズフリーフォンだけでなく、テレマティクスサービスの利便性向上にも活用。事故防止というネガティブ要因の軽減だけでなく、より高度な「クルマと通信の連携」サービスを実現する足がかりにしようとしている。

 今年に入ってからも、トヨタが新テレマティクスサービス「G-BOOK ALPHA」/「G-LINK」(レクサス向けテレマティクス)で全面的にBluetooth接続に対応(4月14日の記事参照)。携帯電話とのケーブル接続は用意しない方針を打ち出した。ホンダも、テレマティクス「インターナビ」のイヤーチェンジにおいてBluetoothに対応する。

 これら自動車業界の動きに対して、携帯電話キャリア、とくにauとドコモの対応は冷淡だ。夏モデルのラインナップを見ると、auがW31Tで1機種、Bluetooth対応機を投入したが、ドコモは1機種も追加していない(編集部注:ボーダフォンは5月24日時点で、夏モデルの詳細を明らかにしていない)。

 安全上、運転中の通話はしない方がいいのは当然だ。警察庁が行った改正道交法の施行後6ヶ月の追跡調査では、携帯電話使用禁止違反で15万411件の摘発があり、携帯電話使用に係る事故発生件数は前年同期比55.4%の減少をしている。

 しかし、地方在住者や仕事でクルマ移動を使うドライバーを中心に、一定率の「運転中の携帯電話利用ニーズ」が存在する事も事実だ。彼らのニーズに対して、安全とのバランスを取ったソリューションが現時点ではBluetoothハンズフリーフォンである。しかし、自動車メーカーに比べて、携帯電話キャリアは「ドライバーの安全」に対する当事者意識が低すぎる。

 また、今後、テレマティクスを中心に、クルマとモバイル通信が連携・融合していく上でも、カーナビなど車載器と携帯電話のシームレスな連携は必要だ。将来的にはクルマに通信モジュールが内蔵される可能性が高いが、それでも携帯電話の諸機能やアプリと連携するために「クルマと携帯電話の接続」のニーズは失われないだろう。

 テレマティクスは現在、乗用車・コンシューマーユーザー向けが中心だが、すでに商用車や商用利用向けのサービス開発も始まっている。クルマと通信の連携分野は、今後、乗用車と商用車の両方で広がっていく。携帯電話キャリアはあらゆる面で、クルマと連携する必要性と可能性について、軽視しすぎてはいないだろうか。

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