誠

プリンタ用表示

連載
2005/05/11 09:07 更新

神尾寿の時事日想:
着々と“戦時体制”を敷くドコモとKDDI

2004年度の連結決算で、減収減益となったドコモと、増収増益となったKDDI。しかし、現時点でのこの結果を取り上げても意味がない。両社が見据えているのは「MNPをいかに生き抜くか」だ。

 5月10日、NTTドコモが2004年度の連結決算を発表した(5月10日の記事参照)。詳しくはレポート記事に譲るが、結果としては減収減益。目下最大のライバルであるKDDIの増収増益と対称的な形になった。

 一部の全国紙など一般マスコミでは、ドコモとKDDIの結果を対比した論調の記事が見られるが、現時点での“成績評価”が意味をなさないのは周知の通りだ。キャリア各社はすでに番号ポータビリティ(MNP)を睨んだ舵取りに入っており、ドコモとKDDIではそこに向かうアプローチが異なるからだ。

 ドコモにとって重要なのは顧客基盤の強化だ。中村維夫社長の就任以降、解約率の低下は最大の課題に掲げられており、ファミリー割引の強化、プレミアクラブ会員向けのサービス拡大などが矢継ぎ早に投入された。これらが奏功し、解約率は目に見えて改善している。FOMA移行に伴う苦境も脱しつつあり、MNPを前に3Gという土俵でライバルと戦う準備が整った。また、取締役の半減・執行役員制度導入など社内体制の引き締めが強化されている点も注目だ。あるドコモ社員は「経費や採算性に対するチェックが以前よりも厳しくなり、(社内的に)コスト削減の意識が高くなっている」と語る。

 ドコモはMNPに向けて贅肉を落とし、筋力をつけている段階だ。そして、その競争力向上は、すでに形になって現れ始めている。現時点での減収減益よりも、ドコモの戦時体制が順調に構築されている方が重要だろう。

 一方、KDDIはこれまで収益・経営基盤の強化を目標にしており、そのために掲げた「選択と集中」の各種施策が奏功して増収増益、付随してauを中心にブランド力も向上した(4月28日の記事参照)。さらに有利子負債の削減も果たしたが、これらはMNP実施時にauを軸足にして顧客基盤を拡大するための下準備である。財務的な憂いを抱えていたら、価格競争の避けられないMNPで、ドコモ相手に互角の戦いを挑むことすら難しい。3Gシフトの先行でドコモを出し抜いたKDDIだが、本当の正念場はこれからである。あるKDDI幹部は「増収増益や単月純増シェアの結果に一喜一憂している段階ではない」と話す。これは謙遜ではなく本音だろう。

 ドコモ、KDDIが急ぎ戦時体制を整えるのは、MNP時にある程度の価格競争が避けられないからだ。ドコモ、KDDI、ボーダフォンすべての関係者が、莫大なコストをかけながらシェアが大きく変動しなかった「(MNPで)マイライン競争の二の舞だけは避けたい」という点で意見が一致している。しかし、いくら顧客満足度やブランド力を向上しようとも、ユーザーの興味が「価格」にも向かう事を避けられないのも事実だ。MNPは出血しながら続けなければならない総力戦である。今年、各キャリアがどれだけ戦時体制を構築できるかが、来年の勝敗に大きく影響する。

[神尾寿,ITmedia]

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.