仏Variopticは4月19日、AF機能に対応した液体レンズモジュールのデモを行った。携帯電話のカメラ用を主な用途と想定しているが、バーコードリーダー、PC用ビデオカメラ、防犯用カメラなどへの採用も考えられるという。2006年第1四半期に製品化予定で、モジュールの単価は1ユーロ程度を目指しているという。
Variopticは仏リヨンに本社を置く会社で、韓Samsungとは開発において協力関係にある。製造拠点も持っているがそれほど大規模ではないため、メーカーにライセンスを供与する形で展開していきたいとする。
基本的な原理は、電導性の高い水溶液と、絶縁体の油を封じ込めた容器の中で、電極から電気を流し、電圧をかけて水溶液と油との境界面を変化させるというもの。境界面のふくらみを変えることで焦点を動かし、AFを合わせる仕組みだ。使う液体の種類によって合焦速度を変えられるが、実際にどのような液体を使っているかは明らかにしなかった。
現在、携帯カメラ用のAF制御システムとしては、ステッピングモーターやボイスコイルモーター(VCM)、ピエゾモーターなどがあるが、液体レンズは「可動部品がないため壊れにくい」「衝撃に強く、連続使用にも耐える」「モーターやギアが不要なので小さくできる」「仕組みもシンプルなのでローコストで製造できる」「従来モジュールの10分の1程度の低電力で動作する」などの点が長所だという。
Variopticは複数の液体レンズを組み合わせることで、光学ズームに対応したカメラモジュールレンズも試作中だ。光学ズームが可能な液体レンズは世界初だという。
独ハノーバーで行われた2005年のCeBITでは光学ズームのデモを行った。今回は光学ズームレンズモジュールのデモは行われなかったが、直径5センチの液体レンズを用いて、焦点距離42ミリ〜105ミリ(35ミリ換算)のズームをしているデモムービーを見ることができた。
携帯電話用カメラをターゲットとしているのは、原理上、大型のレンズを作れないためでもある。現在Variopticが発表しているレンズ「AMS-1000」は、15℃〜40℃という温度条件で動作するもので、直径3.6ミリ。撮像素子が高解像度になるほど大きなレンズが必要になるため、高機能のデジタルカメラへの応用は難しい。「今の技術だと、400万画素あたりが限界だろう」(Etienne氏)
温度変化に弱い点も課題といえる。正常に利用するためには水溶液と油が同じ密度であることが必要だが、温度が変わると液体の密度が変わってしまう。条件がよいところ(=温度変化が少ないところ)でないと、大きなレンズを使えない。現在の技術では、−20度〜80度(温度差100度)の環境下では、直径5ミリが限界だという。
「電気を流すことで水面の形を変える、液体レンズの原理を利用しようと考える人はたくさんいる」とEtienne氏が述べた通り、蘭Philipsも同様のレンズのデモを2004年に行っている。原理はどちらもほぼ同じだが、「Philipsはアプリケーションしかパテントを取っておらず、現在申請中の状態。しかし液体レンズの特許はVariopticが持っている。感触としては、Philipsが液体レンズを独自の技術だということは厳しいというのが一般的な見解」(Etienne氏)とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング