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2005/04/19 05:47 更新

塩田紳二のモバイル基礎講座 第4回:
そもそも電波って何だろう 2 (1/3)

電話を少し動かしただけで電波の受信状態が変わる理由、ダイバシティアンテナとは何をするものか、偏波とは何か──前回に引き続き、電波についてお話しします。

 携帯電話など電波を使うものを解説するには、もう少し、電波について理解しておくほうがいいでしょう。ということで、前回に引き続き、今回も電波についての解説です。

電波が強まったり弱まったりする理由

 電波や通信関連でよく位相(Phase、フェーズ)という言葉を聞くことがあると思います。位相とは、周期的な運動(波動)などの中での状態とか、位置を表す言葉です。

 海の波を見ているときに、目の前を波のどの部分が通過しているか、といったものが位相です。あるいは、sin、cosのグラフの中の位置も位相です。

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sinグラフを使って位相を考えてみよう。sinカーブは、円周上の上を移動する点と中心との角度を使って作ることができ、sinカーブの周期は、0〜2πで表せる。角度をπで表すには、半径が1の円のとき円周の長さが2πになることを使う。円の一端をゼロとして、円周に沿って一周移動したときの距離が0〜360度の角度に相当するため、90度は1/2π、180度はπ、360度は2πとなる(上)実際の波動では、位相の位置とは波動の動くスピードと周波数から決まる「時間」、あるいは波長で見れば、長さに相当するが、0〜2π(0〜360度)で表せば、どのような速さ、周波数の波でも、同じ位置を同じ数字で示すことができる(下)

 同じ形の2つの波があるとき、その位相の違いを位相差といいます。位相差がゼロとは、2つの波形がまったく同じ変化をしていることであり、位相差があるということは、どちらかが遅れているか、進んでいるかということです。

 2つの同じ形の波がぶつかったとき、その場所に着目すると、そこでの位相差により、波の状態が変化します。2つの波の位相が同じ場合(=位相差がゼロ)、波はお互いに強め合うようになります。これは、波のプラス側同士、マイナス側同士が重なるからです。逆に位相がわずかでもずれていると、波のプラス側とマイナス側が重なり、そこは振幅が小さくなります。この状態で、2つの波から合成された信号は歪んでしまいます。位相差が大きくなると、そのゆがみは段々大きくなり、ピークの部分が小さくなっていきます。さらに位相がπ(180度。ちょうど波長の半分)までずれると、プラス側とマイナス側が完全に重なり、信号は打ち消し合ってしまいます。さらに大きくなるとまた歪んだ信号があらわれ、2π(360度)でまたお互いに強め合う状態に戻ります。

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位相差が0、2πのとき波は強くなるが、位相差がπ(180度)のとき、波は完全に打ち消しあう

 電波通信では、この位相を変化させることで変調を行うことができ、これを「位相変調」といいます。簡単にいうと、送信する信号の位相を変化させることで、情報を電波に載せるわけです。位相変調を行うと、電波の振幅は変化しないため、一定の振幅で信号を送ることができ、信号品質を上げることができます。このため、位相変調は、PDCなどの携帯電話で利用されています。

携帯を少し動かしただけで、受信状態が変化する理由は

 電波は、放射されるとまっすぐに進みますが、前回解説したように物体に当たると反射することがあります。

 さて、電波をどこかで受信すると、アンテナから直接やってくる電波(直接波)の他に、どこかで反射した電波(反射波)も受信してしまうことがあります。反射波は、必ず、直接波よりも長い経路を通るため、直接波と反射波の間には、時差ができ、位相がずれます。

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アンテナから直接やってきた電波よりも、どこかで反射してきた電波のほうが必ず長い距離を伝わるため、アンテナが受信するタイミングがずれ、位相もずれる

 2つの電波の位相が同じであれば、山と山、谷と谷が重なり合って振幅が大きくなり、逆に位相がπ(180度)だけずれていると、山と谷が合わさって信号が打ち消されてしまいます。

 直接波と1つ以上の反射波が受信機に到達することを「マルチパス」といいます。このマルチパスが発生すると、上記のように受信信号が変化してしまうことがあるのです。ただし反射が起こった場合、そこで信号が弱くなったり、偏波(後述)が変わったりするため、位相が180度ずれていたとしても、信号が完全に打ち消されてしまうようなことはまれにしか起こりません。

 前回説明したように波長は周波数に反比例するため、周波数が高くなればなるほど、波長は短くなります。波長が短いと、わずかな経路の差であっても、位相でみたときのずれが大きくなります。携帯電話で使われる800MHz、2GHzの波長は、約37センチ、15センチであり、経路がこれだけ違うだけで1波長分ずれてしまいます。これに対してラジオなどで使われる中波帯では、波長が300m近くもあるため、数センチずれたとしても位相差はごくわずかにしかなりません。

 屋内や建物が多いビル街のようなところでは、携帯電話の電波は、直接波とあちこちで反射した多数の反射波が組み合わさって、複雑な状態を作りだしています。このため電話機をすこし動かしただけでも、受信状態が変化することがあるのです。

偏波とアンテナの角度の関係

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