課題は多いが、希望もある電子マネー神尾寿の時事日想

» 2005年04月18日 10時47分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 BCN総研が4月15日、電子マネーの利用動向に関する調査を発表した(4月15日の記事参照)。これによると、電子マネーの認知度はおよそ6割強が認知と高いものの、利用経験者は3割半ばと少ないようだ。

 本稿でも何度か書いたが、電子マネーにおける大きな課題は、チャージの動機付けを行う「入口」と、使える場所をしっかりと提供する「出口」の2つにある。

 まず入口問題だが、これはSuica電子マネーのような交通料金や、スーパーでの日常的な買い物といった“習慣的な支払い”と一体化させていくのが近道だろう。「どこでも使える」という可能性・汎用性の訴求は逆に、電子マネーをチャージさせる動機付けとしては弱い。第一義として「どこで使うか」を明確化させた方がユーザーは受け入れやすい。

 一方、出口問題は地道な努力しかないが、Suica電子マネーのように消費者の動線にそった形で統一的な電子マネーの利用環境を整備するのは有効だ。駅はSuica電子マネーが有利だが、今後は大規模ショッピングモールや、都市部を中心に開発される大規模マンションタウンなどの「陣取り合戦」も始まりそうだ。特に大規模マンションのデベロッパーは“街作り”を行うため、そこに電子マネーの利用環境整備が一枚噛むと、普及の一助になるのではないか。おサイフケータイが、マンションの鍵から買い物にまで使えるというのは面白いと思う。

 さて、課題の多い電子マネーであるが、利用経験者の64%が利便性を評価し、70%が継続利用の意志を示しているのは希望だろう。電子マネーは「使ってみれば評価される」ものなのだ。この点からも、電子マネーを生活習慣に組み込む継続的な取り組みが重要である。

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