誠

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連載
2005/04/13 10:04 更新

神尾寿の時事日想:
回線交換の終焉は「通信モジュール時代」の幕開けか

KDDIは、秋以降の新機種に回線交換方式のデータ通信機能を搭載せず、パケット通信にシフトしていくことを決めた。しかし回線交換を必要とする分野が今もある。

 KDDIがau携帯電話への回線交換方式のデータ通信機能搭載を取りやめるという(4月12日の記事参照)。回線交換方式とは、いわゆる「ダイヤルアップ接続」のことで、コンシューマーユースでのニーズは確かに減少していた。企業ユースでは、独自に設置したアクセスポイントへの接続で使われることもあるが、こちらもVPNを使ったインターネット経由の接続や、携帯電話向けのゲートウェイを設ける企業が増える中で、回線交換方式のニーズが減っていることは間違いない。

 しかし、今でも回線交換を必要とする分野がある。自動車メーカーによるテレマティクスや、カーナビゲーションからのCDDBサーバー接続などだ。

 例えば本田技研工業のテレマティクス「インターナビ」では約21万人のユーザーがおり、新車購入時加入率は約30%を超えているが、センターへの接続は回線交換方式を使っている。日産自動車の「カーウイングス」もホンダと同様、回線交換方式を使っており、3GのFOMAでも64Kbpsの回線交換方式でセンターに接続する。パイオニアの「カロッツェリア サイバーナビ」を筆頭に、市販カーナビが音楽CDのリッピング時にCDDBサーバーに接続する際に使うのも回線交換方式だ。

 一方、自動車業界でパケット通信を使っているのは、トヨタ自動車の「G-BOOK」といすゞ自動車の「みまもりくんオンラインサービス」などだ。

 これまでテレマティクス分野で回線交換方式が主流だったのは、単純に通信コストの問題である。カーナビなど車載器からの接続に対して、携帯電話キャリアは積極的にパケット料金割引を適用してこなかった。そのためパケット通信を使うよりも、通信するデータを圧縮し、回線交換方式でやりとりした方が通信コストが安上がりだったのだ。

 しかし今回、KDDIは回線交換方式を終了する。携帯電話キャリアにとってテレマティクスを代表とする自動車市場への進出は重要なミッションのひとつであり、その中でのこの決定は、同社が「クルマ向け」もパケット通信へのシフトを本格化させる準備が整ったというシグナルだ。その鍵となるのが、トヨタのG-BOOKが採用するKDDI製の通信モジュールである。

 KDDIは現在、CDMA2000 1xとIS-95bベースの通信モジュールを用意しており、前者はトヨタ、後者はいすゞが採用している。しかし周知の通り、1xベースまでだとパケット通信コストの大幅削減は難しい。KDDIはかねてから「1x EV-DOベースの通信モジュールを開発している」(KDDI幹部)と表明していたが、今後クルマ向けとしてはそれを訴求していくのだろう。パケット通信のコストパフォーマンスが高い1x EV-DOベースの通信モジュールならば、回線交換方式と比べて低コストになる可能性が高い。

 とはいえ、カーナビなど車載器の場合、携帯電話のように気軽に機種変更をするわけにはいかない。日産やホンダがトヨタのように通信モジュール搭載にシフトするとしても、携帯電話に比べて車載器の開発には時間がかかる。auの携帯電話を使う既存のテレマティクスユーザーに対するケアも、KDDIはしっかり考える必要があるだろう。

[神尾寿,ITmedia]

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