侮りがたいメモリースティックDUOの“持ちやすさ”神尾寿の時事日想

» 2005年04月12日 10時41分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 小型メモリーカード市場は激しい戦いの中にある。デジタルカメラの普及と機能向上で火がついた小型メモリーカード市場だが、その後、デジタル家電の登場、携帯電話の進化なども進み、多方面で小型メモリーカードの重要性は高まっている。特にPCとデジタル家電、携帯電話では、データのやりとりをする「ブリッジメディア」としての役割は大きい。この傾向は、あらゆるデジタル機器でシームレスに使える近距離無線通信の仕組みが普及するまで続くだろう。

 小型メモリーカード市場の主導権争いで、一歩、先んじているのがSDメモリーカードである。IDCやGartnerなど複数の調査会社がSDメモリーカード陣営の優勢を伝えており、それらのレポートを引用する形で、SD Card Association(SDA)は「2007年にはSDメモリーカードが業界標準になる」と主張している。実際、デジタルカメラはもちろん、携帯電話の世界でも、SDメモリーカード系の「miniSD」の方が採用メーカー数が多い。

 一方、SDメモリーカードカードの対抗馬と見られながらふるわないのが、ソニーのメモリースティックである。2004年12月のBCNランキングによると、メモリースティックのシェアは11.3%、対するSDメモリーカードは41.3%だ。メモリースティックはSDメモリーカードに及ばないばかりか、PC向けのUSBメモリー(31.8%)にすら手が届いていない。携帯電話でも、メモリースティック系の「メモリースティックDUO」を採用するのは、ソニー製端末と三菱製端末のみだ。

 ソニーでは、メモリースティックは著作権保護技術「マジックゲート(MG)」や最低転送速度の設定など、音楽・映像の扱いに向いており、今後、リッチメディアのやりとりが増えるに従って、他のメモリーカードに対する優位性が打ち出せるとしている。また、ソニーが満を持して投入した「PSP」に採用されており、PSXなどソニー製のハイブリッドレコーダーとの連携に使われるのも、ショーケース的な意味で好材料だ。

 だが、もうひとつ、筆者はメモリースティックには侮りがたい強みがあると感じている。それがメモリースティックやメモリースティックDUOの「持ちやすさ」だ。

 周知の通り、メモリースティックは細長い形状をしており、手で持つ時に持ちやすい。特に“超小型”分野のメモリースティックDUOでは、miniSDに比べて圧倒的に扱いやすい形なのだ。試しに比べてみたら、メモリースティックDUOは横幅は20mmとminiSDとほぼ同一だが、長さは31mmある。これはワンサイズ上のSDメモリーカードの32mmと同程度だ。

 抜き差しするブリッジメディアとして考えた場合、このわずかなサイズの違いが、利用シーンでの使いやすさを大きく左右する。実際、メモリースティックDUOは(ソニー製ではあるが)デジタルカメラ専用機やPSPでも使われるが、miniSDは携帯電話以外ではほとんど使われない。

 端末メーカーからすれば、より小型なminiSDの方がスペース効率の点で魅力があるだろう。しかし、ユーザー視点では、「持ちやすい」「落としにくい」というのは、使いやすさを決める上で重要な要素だ。携帯電話などモバイル機器のブリッジメディアとしては、miniSDよりメモリースティックDUOの方が扱いやすい。メモリースティックDUOの形状は“人間中心”であり、今後の強みになる可能性があるだろう。

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