そもそも電波って何だろう?塩田紳二のモバイル基礎講座 第3回: (2/3 ページ)

» 2005年03月31日 15時33分 公開
[塩田紳二,ITmedia]

電波は反射し、吸収されると弱くなる

 さて、電波にはいろいろな性質があります。具体的には、金属などに反射したり、非金属物質の中を通り抜けたり、あるいは物質にエネルギーが吸収されて減衰したりします。もちろん、発信元から遠くに離れれば離れるほど電波は弱くなります。電波は周波数が高くなってくると光のようにまっすぐ進みますが、低い周波数では反射する物体の裏側に回り込むこともあります。

 こうした性質は、波長(周波数)によって変化します。例えば、周波数が800MHzの電波なら、波長は約37センチ。2GHzの電波であれば、波長は約15センチになります。

 波長が長ければ、反射させるためにより大きな金属などが必要になります。逆に周波数が高いと、小さな金属にも反射するようになります。波長に対して十分小さな物体は電波を反射しませんが、波長よりも大きなサイズの物体は電波を反射することがあるのです。

 なお電磁波は、アースされた金属で完全に囲まれた領域には入り込む(あるいは出る)ことができません。これをシールド(電磁シールド)といいます。無線LANやTVチューナーカードの基板上には、金属で囲まれた部分がありますが、これがシールドです。

 また電波は、高い周波数のものほど物質に吸収されやすくなります。不思議なことに電磁波が持つエネルギーは、周波数に比例します。このため、周波数が高いほど、物質に対して影響を与えやすくなります。電波が吸収されると熱になります。これを応用したのが電子レンジです。この電子レンジは、2.4GHzあたりの電波を使います。

 日本国内の携帯電話やPHSでは、800MHz、1.5GHz、1.9GHz(PHS)、2GHz(3G)あたりを使います。このうち、800MHzが「いい周波数」といわれるのは、他の携帯電話周波数よりも低いため、物質に吸収されにくいからです。物質に吸収されにくければ、屋内へ入り込みやすく、また、空中での到達距離が長い、という傾向が強いといえます。そうなると、他の携帯電話の周波数に比べ、基地局の数を減らすことができる、あるいは電波の出力を小さくできるため、設備投資を小さくできるのです。

 「それなら、もっと低い周波数を使えばいいでしょ?」と思われるかもしれませんが、低い周波数はすでにいろいろな用途に割り当てられていること、周波数が低くなると今度はアンテナが長くなってしまう(アンテナは波長に比例して大きくなります)という問題もあり、実際には携帯電話用としては利用できないのです。

“周波数”が“帯”になる理由は

 電波で情報を伝達する場合、電波を信号(情報)に応じて変化させ、これを受信側で検出して取り出します。この電波を変化させることを「変調」といいます。

 電波を変調させると、信号が変化するスピード(=周波数)によって電波に幅が出てきます。一番簡単な例で説明しましょう。FMラジオでは、声の強弱に応じて、電波の周波数を変化させます。音声の周波数は、高くても数10kHz程度ですから、送信される電波は、この範囲で変化することになり、一定の幅(この場合には数10kHz)を占有します。つまり、電波に信号を乗せて伝送すると、その信号自体が持つ周波数の分、電波は広い領域を占有することになります。

 では、デジタルデータを送信することを考えてみましょう。いま、ゼロと1を交互に送信するとします。これを見ると、ゼロと1が「波動」のように繰り返されます。いま1秒間に10ビットを送ったとすると、ゼロと1の2つのビットが5組になるので、5Hzの波と同じです。つまり、電波をデータを1秒間に2Xビット送ると、電波の幅はX Hz分広くなるのです。

 すなわち、データを速く送れば送るほど、1秒間のゼロと1の数が増えていくので、より広い幅が必要になるわけです。

 ある幅の周波数の中で、複数の通信を同時に行うためには、その幅をいくつかに分割して利用します。しかし、情報を伝達する以上、一定の幅の周波数が必要なため、無制限に小さくするというわけにもいきません。また、周波数の近い電波同士はお互いに影響しやすいため、間を空けなければなりません。これをガードバンドといいます。特に違う通信方式同士では、影響が大きくなる可能性があるため、大きく間を空けなければならないこともあります。

 このため、携帯電話など、さまざまな無線方式(用途)に対しては、一定の範囲の周波数を割り当てます。そのような場合、代表的な周波数を使って表現するのが「周波数帯」(バンド)で、たとえば、PDC携帯電話の場合には、800MHz帯などという表現をします。

 しかしこの表現は、正確に800MHzを使っているという意味ではないのです。具体的には、携帯電話には、

810〜828MHz/832〜834MHz/838〜846MHz/

860〜885MHz/887〜889MHz/893〜901MHz/

915〜940MHz/940〜958MHz

という範囲の割り当てが行われており、これらをまとめて「800MHz帯」と呼んでいます。

携帯電話に割り当てられている周波数帯

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.