誠

プリンタ用表示

連載
2005/03/29 10:04 更新

神尾寿の時事日想:
音楽ケータイは「iPodの死角」を突けるか?(後編)

かつての携帯オーディオプレイヤーの代名詞といえば“ウォークマン”。しかしiPodの登場によって、状況は一変してしまった。再びその座を取り戻せる“音楽ケータイ”とはどんなものか、その姿を具体的に考察する。

 W31Sをはじめ、これまで発売された音楽ケータイの多くが、iPodと同様に「PCでのリッピング」を前提にしている。iPodの死角を突くならば、PCを必要としないリッピング環境の構築も必要だ。

iPodの死角を突く「音楽ケータイ」とは

 3月24日、インフォプラントが運営するインターネットリサーチサイト「C-NEWS」が発表したアンケート結果の中にも、ヒントがあった(3月24日の記事参照)。回答者のポータブルオーディオプレーヤー所有率は約5割。所有機器の内訳は、「MDプレーヤー」が4割強でもっとも多く、次いで「CDプレーヤー」が2割強だという。

 現在、日本のポータブルオーディオ市場はMDプレーヤーが支配的であり、特にMDユーザーがいきなり「PCでリッピング」という使い方にまでステップアップするかというと疑問が残る。音楽分野の牽引役である若者も、一部のITリテラシーの高い層を除けば、PCはケータイほど身近な存在になっていない。音楽ケータイのソリューションには、既存のMDプレーヤーを置き換えるような形での、ホームオーディオ連携というアプローチが必要なのではないか。

 むろん、中長期的には、PCもしくはホームサーバーのHDDにパーソナルライブラリを構築する「iPodモデル」にユーザーの利用スタイルは移行していく。PCリッピング・ライブラリの仕組みを今から用意する必要はある。しかし、iPodが先進性ゆえに取りこぼすユーザー層を見逃す手もない。ホームオーディオとの連携はソニーをはじめとする日本の家電メーカーが得意な分野であり、逆にアップルコンピューターには難しい。

ソニーの課題は……

 課題もある。まず、音楽ケータイの使用する「メモリーデバイス」の規格統一が必要だ。音楽圧縮フォーマット、DRMの仕組みも統一する必要があるだろう。その上で、中高生が自分用に買うような格安な小型オーディオまで、メモリーカードスロットを用意する。64〜128メガバイトの音楽ケータイ用メモリーカードで、MDを置き換えていくイメージだ。一方で、リテラシーの高い層には、PCやホームサーバーを使ったパーソナルライブラリでの音楽スタイルを提供する。iPodの死角である「リテラシーの壁」の部分を突きつつ、iPodと同様のモデルも提供する。ここに音楽ケータイの可能性があると思う。

 そして、この先導役としてふさわしいのはソニーだろう。ソニーは携帯電話からホームオーディオ、カーオーディオまで音楽を取り巻く機器すべてに製品を投入している。iPodに痛撃を受けたとはいえ、依然として音楽分野におけるウォークマン/ソニーブランドの影響力は大きい。

 だが、一方で、ソニーはこれまで「MDのくびき」から逃れられずにきた。メモリースティックの失敗、iPodに対する敗北の原因の1つが、自らの生み出したMDに引導が渡せなかったところにあるのは間違いないだろう。音楽ケータイもまた「MDへの配慮」から他のオーディオ分野と連携できなければ、あえてiPodが得意とするフィールドでのみ戦うことになる。これはソニーにとって分の悪い勝負であり、音楽ケータイの裾野を広げる上でもマイナスだ。

 いま「Good bye MD」と言うべきは、アップルではなく、ソニーなのではないだろうか。

[神尾寿,ITmedia]

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.