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連載
2005/03/28 10:25 更新

神尾寿の時事日想:
音楽ケータイは「iPodの死角」を突けるか?(前編)

ソニー“W31S”に代表される「音楽ケータイ」。携帯オーディオプレイヤーの分野でiPodに先行されたソニーがアップルに逆襲できる可能性があるとすれば、それは音楽ケータイではないだろうか。

 今年、注目のデジタル機器の1つが「音楽ケータイ」だろう。海外ではモトローラの「iTunesケータイ」とソニーの「ウォークマンケータイ」の話題が耳目を集めている。国内でも、ソニーが音楽“全部入り”ケータイ「W31S」を満を持して投入。W31Sについては開発者インタビューがすでに掲載されているが(3月25日の記事参照)、それを読むだけでも開発者の意気込みが伝わってくる。

 これら音楽ケータイにとって最大のライバルが、アップルコンピュータの「iPod」であることは間違いない。特にソニーはウォークマンで築いた「ポータブルオーディオの代名詞」の座を、iPodによってアップルコンピュータに奪われた経緯がある。音楽ケータイの分野から逆襲を図りたいところだろう。

 音楽ケータイはiPodの勢いを止められるか。その成否を握る重要な鍵は、「iPodの死角」を突けるかにある。

 周知の通り、iPodの基本コンセプトは、PCのHDDを巨大なパーソナルライブラリ空間とする「iTunesを使った音楽CDパッケージモデルからの脱却」にある。iPodシリーズはiTunesにモビリティ(可搬性)を付加し、その上でハードウェアの魅力を付け加える“iTunesの周辺機器”なのだ。

 iPodがリッピングにPCを必要とするのは、コンセプトから来る必然である。リッピングおよびライブラリの構築・管理のためにPCを必要とする。これはiTunes=iPodコンセプトの強みであり、最大の弱点でもある。言うまでもないが、PCが生活に根付いていない層には「iPodブーム」は及ばないのだ。

 実際、北米のiPodブームを構造解析すると、その火付け役にエコーブーマーと呼ばれるPCリテラシーの高い若年層がいた事がわかる。彼らは中産階級以上の家庭に育ち、物心ついた頃からPCに囲まれていた。「クリックする世代」と呼ばれる所以だ。

 日本でもPCの普及率は上がっている。内閣府の資料によると、平成15年度末までのPC普及率は65.7%であり、今年度はさらに上昇しているはずだ。しかし、生活にPCが根差しているかという点では、北米とやや異なる状況を呈している。特に現在10代半ばから20代前半の若年層では、PCよりもケータイの方が身近な情報機器だ。この微妙な“ずれ”が、PCの利用を前提とするiPodの死角になるのではないだろうか。

[神尾寿,ITmedia]

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