ケータイ世代のPC選び神尾寿の時事日想

» 2005年03月25日 11時16分 公開
[ITmedia]

 新入学・新就職シーズンである。

 毎年、この時期になると、多くの知己からPC購入の相談を受ける。特に筆者は若年層のグループヒアリングを定期的に行っていることもあり、「大学入学で初めて自分用のPCを買うんだけど」という相談が多い。

 こういった購入相談において、最近の傾向として感じるのが、ユーザーの「割り切り」だ。PCの使用目的がハッキリしており、余分な機能は求めない。プリインストールソフトがたくさん入っていて、「いろいろできるかも」といった可能性の担保にあまりなびかないのだ。逆に「使いやすさ」や「デザイン」、そして「価格の安さ」に対するニーズは大きい。

 ふと考えてみると、この選び方は「ケータイ的」だと気づく。実際男女を問わず、ケータイを使いこなしているユーザーの方がすっぱりと割り切る傾向が強い。彼らの多くが、かつてのPCユーザーのように拡張性や自由度を重視しない。Webブラウズとメール、そしてオフィススイート(ワープロと表計算)ができればよく、必要に応じてソフトウェアの追加はするが、周辺機器などハードウェアにはほとんど投資しない。目的意識がハッキリしていて、シンプルだ。一方で、価格とデザインはやたらと気にする。

 結果として、ここ2年ほど、新・大学生にはアップルコンピューターの「iBook」を勧めている。彼らのニーズからするとWindowsである必要性がなく、むしろMacOSの使いやすさやデザインが評価されるからだ。iBookはシンプルな構成でデザインがよく、コストパフォーマンスも悪くはない。学生時代の2〜3年間はiBookで過ごして、就職活動に入ったら、必要に応じてWindows PCに“機種変更”すればいい。ケータイ世代のファーストマシンとして、今のiBookはいいポイントを突いていると思う。

 しかし、よく考えてみれば、もはや「PCである」必然性すら薄れているのかもしれない。極論すれば、ケータイ世代が求めるのは「ケータイよりも大きな情報端末」に過ぎず、インターネットとメール、オフィススイートが標準機能としてあり、あとは携帯アプリのように必要に応じてソフトウェアの追加ができればよいのだ。今のPCのように、自由度や拡張性と引き替えに、不安定性や脆弱性、互換性の問題を抱える必要性はないのかもしれない。

 ケータイを「初めての情報端末」とするユーザー層が増えることで、PCのあり方もまた、変化を余儀なくされるのではないだろうか。

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