役者が揃い、始まる「モバイルFeliCaの時代」 神尾寿の時事日想:

» 2005年02月25日 09時33分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2月24日、ボーダフォンとフェリカネットワークスが非接触ICチップ「モバイルFeliCa」の携帯電話搭載で合意したと発表した(2月24日の記事参照)。同社は2005年10月をめどにモバイルFeliCas搭載携帯電話を発売し、2006年度以降は標準搭載化を目指すという。これはauと同じシナリオであり、率先してこの分野を切り開くNTTドコモもあわせて、2006年度にはモバイルFeliCaが携帯電話の標準的な機能になる事が確定した。

 フェリカネットワークスの河内聡一代表取締役社長は、今回のボーダフォン採用に対して、同社の理念である「オープン戦略」が奏功したとコメント。

 「NTTドコモ、KDDI、ボーダフォンへの導入が決まり、目標とする6000万台のモバイルFeliCa対応携帯電話の普及に向けて着実に歩んでいます。今後はサービス事業者にとってもモバイルFeliCaが魅力的なものになるよう努めていきます」(河内社長)と語った。すでにモバイルFeliCaに対応したシステムの導入相談から構築まで、様々なソリューションが提供できるパートナー企業も16社おり(2月24日時点)、目下、拡大中だという。

 ボーダフォンがモバイルFeliCaを採用したというのも象徴的だ。周知の通り、ボーダフォンは3G端末の国際調達プログラムを推進しており、ローカル市場向け機能への対応では他社より出遅れる面があった。そのボーダフォンが、「日本の市場を見たときに、このサービスは必須」(ボーダフォン)として、auと同じタイミングでの対応に動いた。これはモバイルFelicaが、将来、カメラと同じく“携帯電話のインフラ”になると重要視したからだろう。

 ドコモ、au、ボーダフォンと役者が揃ったことで、ユーザー側の端末普及にはめどがついた。「ユーザー端末が一気に普及し、そこからニーズとサービスが芽吹く」というのは、携帯電話のみに許された黄金律だ。また、携帯電話は地域格差なく、全国にすばやく新機能・新サービスを展開できるという強みもある。携帯電話内のインフラになったモバイルFeliCaが、社会インフラにまで成長するのは確実といえる。

 今後、重要になるのは、「リアル連携」するサービス事業者側が、モバイルFeliCaを自らのビジネスで生かせるか、である。

 例えば、JR東日本の大塚陸殻社長は、モバイルSuica導入のメリットについて、「乗車券や定期券の購入など、駅の(窓口)機能のほとんどが携帯電話で提供できるようになれば、駅のシステムを変えることができる」と語った。これは、モバイルSuicaが普及して窓口機能の大半が携帯電話サービスに移動すれば、券売機や精算機、各種窓口の設置スペース削減が可能になり、そこを「店舗」に割り当てることで駅の収益性を向上させる“システム改善”ができる、という意味だ。

 JR東日本のように「モバイルFeliCaの時代」を前提にすれば、様々な業種でシステム改善や新ビジネスの創出ができる。携帯電話関連ビジネスの裾野は、2006年度以降大きく広がっていくはずだ。

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