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連載
2005/02/03 09:30 更新

神尾寿の時事日想:
「食の安全・安心」の先にあるQRコードの可能性

カメラ内蔵携帯の普及に伴い、浸透しつつあるQRコード。現在の使い道は、雑誌や新聞の広告などが中心だが、そのほかにもQRコードのメリットを生かせる分野がありそうだ。

 インフォシークと三菱総合研究所のアンケート調査によると、QRコードの認知度は9割弱、利用経験者は3割弱だという(2月2日の記事参照)。現在、カメラ内蔵携帯電話の多くがQRコード読み取り機能を備えており、機種変更による入れ替わりで端末普及数は増えている。それに呼応して、雑誌記事や広告分野でQRコードが広まり、認知度が上がってきているようだ。

 現在、QRコードの用途は「広告」がメインだが、もうひとつ大きな市場として「食の安全・安心」分野が考えられる。

 その筆頭は、BSEや無登録農薬問題、ラベル偽装表示で脚光を浴びた「食品トレーサビリティ」である。これは食品の生産から流通過程の情報を消費者に開示する仕組みで、食の安全と信頼のために必須の機能と考えられている。政府のe-Japan戦略IIでも食品トレーサビリティは主要課題に挙げられており、農林水産省や各自治体、そして民間企業と官民連携で取り組まれている分野だ。

 これまで食品トレーサビリティを実現する技術の本命は「無線ICタグ(RFID)」の利用だと考えられていた。RFIDでは豆粒大の非接触ICチップをラベルに埋め込み、生産から流通、小売りまで一貫したトレーサビリティ情報を管理できる。しかし、RFID方式は非接触ICチップの低価格化と、流通過程すべてにシステム導入をするコストの問題が課題になっている。

 そこで最近、消費者側に「携帯電話」という形で普及するQRコードを食品トレーサビリティ分野で応用しようという取り組みが増えている。2004年には首都圏コープ事業連合やエコスが、QRコードで農産物の生産履歴情報を提供する実証実験を実施。水産物では、NTTドコモとドコモ・センツウ、水産庁の外郭団体「海洋水産システム協会」が、魚の捕獲場所情報をQRコードで管理する実証実験を行っている。また北海道のベンチャー企業ノアでは、QRコードを使った生産履歴システム「畑のとれさぶろう」を販売しており、すでに一部の農家で使われ始めている。

 食品トレーサビリティ以外にも、QRコードの活用法はありそうだ。例えば、アレルギー誘発可能性食品の表示だ。現在、表示義務化されている特定原材料は5品目だが、消費者からは表示推奨化されている20品目すべての表示や、生産過程で食品に含まれるすべての物質の表示が求められている。しかし、製品のパッケージ面積には限りがあり、メーカーにとってそこは重要な広告スペースでもある。「過敏症の方への配慮と、そうでないお客様への広告スペースとのバランスが難しい」(食品メーカー関係者)のが現状だ。その中で、表示義務化された5品目以上のアレルギー誘発可能性食品の使用情報をQRコードで提供する、といった使い方が考えられるだろう。

 「食の安心・安全」情報の提供は消費者への義務というだけでなく、生産者や流通・加工業者にとって安全のブランド化を図るビジネスチャンスでもある。QRコード活用の可能性は、スーパーマーケットにも眠っていそうだ。

神尾寿

通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、業務委託で大手携帯電話会社のデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで取材している。ジャーナリストのほか、IRICommerce and Technology社レスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。

[神尾寿,ITmedia]

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