連載![]()
2005/02/01 10:19 更新
神尾寿の時事日想:
MNPを前に“時限爆弾”のスイッチを切ったドコモ
ドコモが「2年以上使った端末ユーザーに、新品電池パックを無償提供する」と発表した。ここには、ナンバーポータビリティを見据えたある「狙い」が垣間見える。
NTTドコモが2年以上同一端末を使ったユーザーを対象に、新品の電池パックを無償提供すると発表した(1月31日の記事参照)。この施策は気に入った端末を長く使いたいユーザーにとって朗報であるし、携帯電話の製造・リサイクルエネルギーを鑑みれば環境貢献としての評価もできる。
しかし、黎明期からの携帯電話ビジネスを知る身としては、ちょっとした驚きも隠せない。なぜなら、日本の携帯電話ビジネスにおいて、端末の電池パックはユーザーのもとに仕掛ける“時限爆弾”だったからだ。
ここには歴史的な背景がある。サービスの主体が音声通話のみだった1999年までは、キャリアは時限爆弾を設置する必要があまりなかった。新端末と旧端末でサービス面の差がなく、キャリアの収入は基本的に同じだったからだ。
しかし、1999年のiモード登場以降、状況が変わる。コンテンツサービスはパケット料金という新たな収入源を生みだした。しかもパケット料金収入は、音声通話と異なり、機能の進歩によって増加する「打ち出の小槌」である。新端末を早期に普及させることが、コンテンツプロバイダーに新サービス対応を促し、ユーザーのデータ通信ARPUを向上させるための必須条件になった。
しかし、インセンティブを厚くして機種変更を促すのは、キャリアの負担が大きい。そこでユーザーに定期的な機種変更を促す手段として注目されたのが、「電池パック」の寿命である。
携帯電話で用いられる電池は一般的にみてかなり高性能だが、絶え間ない充放電によって劣化が進むのも早い。1年半から2年も経てば、「電池が持たなくなった」と実感できる。キャリアはこのタイミングを見越して機種変更が手頃になるような価格設定やポイントサービスを行い、一方で、電池パックの交換・既存端末の継続利用を積極的に促すような施策はあまり採ってこなかった。電池パックは一般ユーザーに機種変更を促すサインであり、ある種の時限爆弾だったのだ。
しかし今回、ドコモは購入後2年が経過した端末の電池パックを無料交換するという。これは既存ユーザーを重視する最近のドコモらしい施策だが、その背景には2006年の番号ポータビリティ(MNP)対策が垣間見える。電池パックの劣化はこれまで機種変更のタイミングであったが、MNP実施前後はキャリア変更のタイミングになる可能性があるからだ。特に最大手のドコモは、そのリスクが大きい。無料交換の実施タイミングや、1契約1回しか利用できない点からも、「2006年前後の時限爆弾の発動を止めた」とも考えられる。
パケット料金定額制の実現によって、「新端末=ARPU増大」の構図は崩れた。しかし、おサイフケータイの早期普及には、新端末への買い換えを促す必要性はあったはずだ。それを押してまでドコモが時限爆弾のスイッチを切ったのは、それだけMNP対策を重視しているからだろう。
|
関連記事
- 2年以上使ったら新しい電池をプレゼント〜ドコモ
ドコモプレミアム会員が対象。2年以上同一端末を使った場合、申し込みから1〜2週間後に、メール便で送付する。 - ドコモ、2年以上携帯使えば電池を無償提供
[神尾寿,ITmedia]
Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
新着記事
- 不景気の影響か……2009年から減少続く「お年玉出費」
2010年に、お年玉をあげた人はどのくらいいるのだろうか。2009年と比較すると、あげた人は54.0%から52.4%、もらった人は12.1%から10.5%と、ともに1.6ポイント減少した。インターワイヤード調べ。 - 欧米での信用収縮懸念一服から堅調だが休日を控え上値も重い
- KY発言を連発するのは“大企業病”のせい? トヨタの不可解な言動
トヨタ自動車の豊田章男社長が、日本のトップ企業とは思えないような発言を繰り返している。KY発言をする背景には「一連のリコール問題ぐらいでは経営が揺らぐことはないからでは」(アナリスト)といった声も出ている。 - 20〜30代の独身男女に聞く、恋人と住まいの関係
自宅から恋人の家まで行くのに、どのくらいの時間がかかるのだろうか。20〜30代で恋人がいる独身男女に聞いたところ、平均時間は81.9分であることが分かった。アットホーム調べ。 - 東京ガス、集合住宅のバルコニーに設置できる太陽熱ガス温水システムを発売
新着記事
KY発言を連発するのは“大企業病”のせい? トヨタの不可解な言動
「海の新幹線」テクノスーパーライナーは今? かさむ燃料費……決まらぬ就航先
政権中枢に食い込んだ脱税指南役、『借りたカネは返すな』著者逮捕の内幕
“よくできたゲーム”と“面白いゲーム”の違いとは?――マリオの父、宮本茂氏の設計哲学(前編)
アクセスランキング
- 利息返還請求で4.4兆円の負担……「お金を返せ!」の影響がズシリ(2009年10月29日)
- 路上で「名刺交換してください」と、せがんでくる人の正体(2010年01月22日)
- ここでは働きたくないなあ……と大学生が思う業界(2010年01月15日)
- 大手新聞の有料Web版への動きは、“正しい”ことなのか(2010年02月03日)
- 路上パソコン族「ストリートコンピューティング」って、どんな人?(2010年02月02日)
- 不思議の国ニッポンが、好かれる理由(2010年01月26日)
- 20XX年……大手新聞は生き残っているのか(2010年02月05日)
- “スペック”が高い人の特徴(2010年02月08日)
- なぜトヨタの社長は自ら会見しないのか(2010年02月05日)
- なぜトヨタだけ? 同じハイブリッドでもホンダ大丈夫なワケ(2010年02月09日)














