絶体絶命に思える状況こそ「成長のチャンス」：「働く意味」がわからない君へ

連載：「働く意味」がわからない君へ　について

本連載は、諸富祥彦著、書籍『「働く意味」がわからない君へ　ビクトール・フランクルが教えてくれる大切なこと 』（日本実業出版社）から一部抜粋・編集しています。

　「希望の職業に就けていない」
　「今の部署ではやる気が起きない」
　「上司が評価してくれない」
　「失敗するのが怖くて動けない」

本書は、このようなビジネスパーソンが抱きがちな48の悩みに、ビクトール・フランクルの言葉と彼が創始したロゴセラピーの考え方をもとに答えます。

ロゴセラピーとは、フロイトの「精神分析」、アドラーの「個人心理学」に続く3つめの潮流として位置付けられている“生きる意味”の発見を援助する心理療法です。

「あなたには、あなたにしかできない使命がある」。『夜と霧』の著者であり、人生の意味を見つめ続けたフランクルが贈る運命のメッセージです。

日々の仕事に「意味」を見い出し、「使命感」を感じて取り組むためのヒントが詰まった一冊です。

　人間が成長したり、現在の自分自身を超えて新たな自分になれるのは、ものすごくつらく苦しい状況に置かれたときだとフランクルは言います。

著しく困難な外的状況こそ人間に内面的に自らを超えて成長する機会を与えるものだということを忘れているのである。
（『夜と霧』）

　何をやってもうまくいかない。もうこのままだと自分はダメになってしまう。いろいろなピンチをこれまで切りぬけてきたけれど、今度だけは切りぬけることができない──そんなふうに思えてしまう困難な状況に置かれたときにこそ、人間はその絶望的な状況に耐え、それを何とかしのぎ切りぬけることによって大きな成長を果たします。これが人間の成長に関する真実なのです。

（写真と本文は関係ありません）

　しかしながら、多くの人はこのことを忘れてしまいます。

　そして、人間にとって最大の成長のチャンスである、いちじるしく困難な状況を前にしながら「ああ自分はダメだ。今回だけはもう無理だ」と言ってあきらめ、せっかくの貴重な成長の機会を手放してしまうのです。

　絶体絶命だと思うような困難な状況こそ、それを切りぬけたときに、あなたに最も大きな成長の機会を与えてくれるものであることを心に刻んでおきましょう。

　人間は、「自己超越」していく存在です。できるだろうか、変われるだろうかと思い悩む必要はありません。

人間は自分自身を超えるものである。人間というものは、自分の性格を再形成して行きさえすれば、自分自身をも超えることができるのである。
（『現代人の病』）

　自分がそのためになら生きるに値すると思えるような何かの理想とか、自分がこの人のために生きていきたいと思う誰か、あるいは自分がそのために何かをすることができる何かに向かって自分を超えていくことに、ほかの生物とは違う人間の偉大な点があるとフランクルは考えます。

　「自己超越」と言っても、神のような存在になれ、ということではありません。超人的な存在になれ、ということでもありません。フランクルの「自己超越」とは、自分を超えて、自分以外の誰かや何かへと向かう精神の働きのことを言っています。

　人間は、誰かや何かとのつながりの中で、その誰かや何かのために生きるときに、本当に自分らしくなることができるし、精神的な強さを発揮することもできるのです。

　自分に限界を感じるという人に、フランクルはこう言うのではないでしょうか。

　「自分に限界があるとかないとか、そういうことを自分で決めること自体、おこがましいことだ。人間というのは、自分を必要としている何か、自分の人生に与えられた使命、自分を必要としてくれる誰か──そうしたもののために懸命に生きるときにはじめて、真の人間となるのだ。そしてそのとき、人は気付いてみればいつの間にか自分で勝手に引いていた限界の境界線を超えているのだ」

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