人事評価の不満、現場の声は経営層に届かず――評価する側に迷いも
人事評価の軸が「年齢や勤続年数」から「成果」に変わりつつある中、一向に変わらない評価制度にいらだちを感じたことはないだろうか。評価する側の声を聞いてみると……。
昇進や給与に大きな影響を与える人事評価。その評価基準や方法に「納得がいかない」と思ったことはないだろうか。評価軸が「年齢や勤続年数」から「成果」に変わりつつある中、評価する側の人事部門や経営層は、こうした現場の不満をどのようにとらえているのか――。
あしたのチームが調査したところ、現場の声は人事担当者には届いているものの、経営層には届いていないことが分かった。人事制度の課題についても、経営層より人事担当者のほうが深刻にとらえているようだ。
人事評価制度の不満、経営層に届かず
どれくらいの従業員が自社の人事評価制度に満足しているのか。人事担当者と会社経営者に聞いたところ、経営者の約7割が「自社の従業員は満足していると思う」と回答しているのに対し、人事担当者は4割にとどまるなど、経営者のほうが楽観的に見ているようだ。
また、従業員から人事評価に対する不満の声が挙がっているかどうかをたずねると、経営者の7割超が「ない」と回答。不満はないと答えた人事担当者は25%強にとどまり、ここでも意識にズレがあることがうかがえた。
こうした不満の声を受けて、企業は人事評価や制度を見直そうとしているのだろうか。人事担当者は7割が見直すべきと答えているが、経営者は約半数のみとなった。見直すべき理由としては「評価基準の中に古いものがある」「公正な評価ではなく印象が第一になっている」「どの業務でも同じ評価内容だから」、見直す必要がない理由は「希望を聞いたらきりがない」「波風を立たせたくない」「客観的に判断できる人材が社内にいない」という声が挙がっている。
経営者の約半数が「人事評価の悩みアリ」
評価基準や働き方が変化する中、評価する側に悩みや迷いはないのだろうか。人事担当者は約7割が、経営者は約6割が「悩んでいる」と回答した。どんな点で悩んでいるかを聞くと、「評価と報酬の関連性が保てていない」(49.8%)という声が最多となり、「評価者による甘辛の評価が出てしまう」(37.5%)、「目標の合意形成がとれていないため、従業員が評価を納得しづらい」(30.1%)と続いた。
この調査から分かるのは、人事制度に対する現場の不満が人事には届いているものの、その先の経営層まで届いていないため、改善が進まないという業務現場の実態だ。働き方が大きく変わりつつある中、評価の方法も見直す時期に来ており、経営層も現場の実態を直視する必要がありそうだ。
調査は2014年10月7日から9日にかけて、従業員300人未満の会社を対象にWebアンケート方式で実施。パネルは20歳から69歳までの人事採用・人事評価に携わっている会社経営者・役員または人事担当者の男女400人。
関連記事
- NTTコムウェアが“タレントマネジメント”を導入した理由
社員一人一人の資質に焦点を当て、埋もれた人材を発掘する――。今、社内の人材を有効活用する人事戦略「タレントマネジメント」が注目を集めている。NTTコムウェアでは、クラウドを使って社員のスキルを可視化する新人事システムを構築しようとしている。その理由とは? - 社員を突然「COO」に“昇格”させて適性判断――そんな会社がある
企業の経営陣が決まる過程は外からは分かりにくい。時として“密室人事”の批判を浴びることもあるが、りそなホールディングスと傘下3行は、幹部育成の時期から外部のチェックが入る仕組みを導入している。 - 自信がない人ほど成功する? “平均以下効果”を考える
評価には、自己評価(認識)と他者評価(認識)があります。その2つは必ずしも一致しないもの。違いを比較し、そのギャップに着目していくと今後の参考になるでしょう。 - 立派な評価制度が、人と組織を駄目にする
せっかく立派な評価基準を定め、多くの人が時間をかけて評価の検討・決定に参加し、しっかり運用しているのに、結果的に業績が低迷し、組織にも閉塞感が漂い始めるのでは何をしているか分からない。しかし、企業現場ではそんな皮肉な状況が生まれつつある。 - 納得できない人事考課、実は成長のチャンス
上司にとっても部下にとっても、考課というのは難しいものです。今回は、あなたの考課と行動傾向を上手く活用することで、一皮むけたビジネスパーソンになるためのヒントをご紹介しましょう。 - 前向きな評価会議をするための5つのポイント
人事制度を運用していく上で重要なのが評価会議。意味のある評価会議を行うためには何が重要なのか、筆者は5つの観点から説明する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.