ストレスを感じたら「よかった」と言ってみる:ストレスをためない技術・最終回
ストレスと上手に付き合うには、事実と解釈をいったん切り離すことが大切。最終回では、少しハイレベルなストレス対処法を紹介します。
集中連載『ストレスをためない技術』について
本連載は、2012年2月16日に発売の松島直也著『ストレスをためない技術』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
ストレスは、決してなくならない。ストレスはできるだけ感じたくないものです。けれど、世の中からストレスは決してなくなりません。一歩外に出れば、さまざまなことがストレス要因となり、あなたを襲います。自分だけが「安全地帯」に逃げ込むことはできないのです。
大事なのは「ストレスをなくすこと」ではなく、「どう付き合うか」を知ることです。本書では、NLP(神経言語プログラミング)の専門家である著者が、ストレスとの正しい付き合い方を紹介します。
事実と反応を区別して、事実は事実としてそのまま受けとめる。その大切さはすでに述べました。仕事で失敗して、嫌な気分になる。まさにこれも「仕事で失敗した」という事実と「嫌な気分になる」という反応がセットになっています。
ストレスと上手に付き合うには、この事実と反応をいったん切り離すことが大切。ここではもう少しハイレベルなストレス対処法を紹介します。
それは「とりあえず、ポジティブ・セルフトークをつぶやいてしまう」という方法です。この「とりあえず」「つぶやいてしまう」というところが意外に重要。やり方は簡単で、仕事で失敗したときなど、何も考えずとりあえず「よかった」とつぶやいてしまいます。
- 仕事で失敗した → よかった
- 残業が続いている → よかった
- 嫌な上司にいじめられた → よかった
理屈も何もありません。とりあえず「よかった」とつぶやいてしまう。ただそれだけです。「そんな無茶な!」と思う人も多いでしょうが、これだって十分に効果のあるストレス対処法です。
たしかに普通に考えれば、仕事で失敗をして「よかった」はずはありません。ですがその際、強引にでも「よかった」とつぶやくと、脳は「なぜよかったのか?」を勝手に考え始めます。
「今回の失敗で大事なことが学べたから」「この段階の失敗なら挽回が可能だから」「成功ばかりで思い上がらずに済んだから」などです。どんな状況でも探してみれば「よかった理由」は必ずあります。
何度も述べている通り、ストレスの正体は「自分自身のネガティブな反応」です。その反応が出る前に、とりあえず「よかった」と言ってしまうと、嫌でも「よかった理由」に意識が向いてしまうのです。
人間の脳というのは不思議なもので「物事をポジティブにとらえよう」と理屈で考えても、思うように働いてはくれません。ところが、実際に声にして「よかった」とつぶやけば、その言葉がスイッチとなって勝手に整合性を取ろうとします。
意外なほど効果があるので、ぜひ試してみてください。
そして、もう1つ、お勧めのフレーズがあります。それは「○○だけ」です。
- 仕事で失敗した → 仕事で失敗しただけ
- 職場に相性の悪い人がいる → 相性の悪い人がいるだけ
- 通勤時にマナーの悪い人がいた → マナーの悪い人がいただけ
いかがでしょうか。
この「○○だけ」というのは、事実を事実としてとらえ、過度に反応しないためのフレーズ。「よかった」よりも「○○だけ」のほうがしっくりくる人は、この言葉をつぶやくのもお勧めです。
実際仕事で失敗したとき、「仕事で失敗しただけ」と言ってしまうと、本当に「ただそれだけのこと」と思えてくるから不思議。「言葉の軽さ」に引っ張られて深刻にならずに済みます。
私も「○○だけ」をよく言いますが、ちょっと笑えてくるのも、このアプローチのよいところ。仕事で失敗して「失敗しただけ」とつぶやくなんて、正直滑稽です。ですが、その瞬間に状態が改善されているのですから、言わば魔法の言葉なのです。
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