20代後半で、リーダーのプラス・マイナスを経験しておく:選ばれ続けるリーダーの条件(1/2 ページ)
ビジネスマンのキャリアは、だいたい3年単位で節目が訪れます。入社3年目は、新しいビジョンを定める大切な時期です。小さな案件にあたるグループであれ、「リーダーに選ばれる」ことがこの時期には大切です。
集中連載「選ばれ続けるリーダーの条件」について
本連載は、山元賢治著、書籍『選ばれ続けるリーダーの条件』(中経出版)から一部抜粋、編集しています。
グローバルの波の中で、仕組みや慣習もものすごいスピードで変わっていきます。日本企業のあり方や個人の働き方も、従来のままではいられない。刻々と変化する世界で、変わらず求められる真のリーダーの条件とは何か? 外資系トップ企業で30年活躍した経験を、次世代のリーダーに伝える1冊です。
アップル、オラクル、IBMやEMCなど、30年間外資系トップ企業で働き、ビジネス界の巨人と肩を並べてきた山元賢治氏が大切にするのは、誰からも「選ばれる」人が持っているルールです。
「選ばれる人は、目先のテクニックに走らず、もっとも守るべき“原則”を理解し、日々実践できるかどうかで決まる」
未来のリーダーを目指す人、リーダーとして頼られる人間になりたい人に読んでほしい1冊です。
20代後半でリーダーのプラス・マイナスを経験しておく
個人差がありつつも3年目まではおおよそ年単位で語れますが、それ以降になると個人差が大きくなるため、厳密に「何年目」というくくりで見るのがむずかしくなります。そこで、20代後半という枠から「選ばれる」をテーマに考えてみます。
ビジネスマンのキャリアは、だいたい3年単位で節目が訪れます。入社3年目は、新しいビジョンを定める大切な時期です。そのあとは6年目。大卒で入社すると28歳、29歳くらいということになります。
コンピュータに例えると、CPU、メモリ、HDDのバランスが一番いいのがこの6年目の時期。頭もシャープでCPUの演算処理は速いですし、実力がついてきてメモリも大きくなっています。経験や勉強によって、HDDにもデータが蓄積されてきています。
この頃には自分がやりたいと思っている仕事をアサインされているべきですし、その仕事を高性能のスペックでこなしているイメージを持つべきです。
小さな案件にあたるグループであれ、バジェットを持ったプロジェクトであれ、「リーダーに選ばれる」ことがこの時期には大切です。
リーダーとして経験することは、口頭で教えることができません。自分で体感するしかないものです。
まずは、選ばれること自体に興奮があります。20代でリーダーをやるということは、年上の部下を持つことになるかもしれません。同期や年長の社員がいるなかで選ばれるというのは、快感です。この快感を早めに体験してほしいと思います。おそらく、死ぬまでやめられないほどの快感です。
そして、リーダーになると1人ではできないサイズの仕事を経験します。ある人数で仕事をやり遂げるようにリードするという経験をします。成功したときには、部下としてやったときよりもはるかに大きい喜びを味わうことができます。
しかし、リーダーはいい思いをするだけではありません。いいことがある一方、同じくらい嫌な目にも遭います。人が言うことを聞かないということも経験しますし、陰口を叩かれることもあります。身に覚えのない妬みを受けることもあります。
端から見ているとリーダーのいい部分ばかりが目につきますが、実際は嫌な目に遭うことも多いものです。自然と自分の行動を省みる機会が増えますし、コミュニケーションのとり方や仕事の進め方、部下のモチベーションの上げ方など、非常に多くの学びがあるはずです。
リーダーを務めた人間とそうではないのとでは、伸び方に開きが出てきます。ですから、リーダーに選ばれる自分になるように意識を高く持っておくことです。
リーダーに選ばれ、リーダーとして仕事を完遂し、そしてリーダーとして輝く経験をしておくことが、その後の「選ばれる」につながります。
リーダーか、スペシャリストかを決断する
また、特に技術系の社員にとっては「スペシャリストになるのか、マネジメントを志すのか」を決めるのがこの時期です。
中途半端な気持ちでスペシャリストを目指しても、トップにはなれません。また、スペシャリストになりたいのなら、20代で突き抜けないと頭の回転が鈍っていきます。迷っている暇はありません。
覚えておいてほしいのは、マネジャーになった瞬間にスペシャリストとしてのスキルは落ちるという運命です。マネジャーが、現場の人間より技術レベルを高く維持することは容易ではありません。そのため、マネジャーになることを決めた途端、現場のプレイヤーとして第一線で活躍することからは離れなければいけません。マネジャーを引き受ける際には、その覚悟ができているかどうかが重要です。
ただ、人生の選択すべてに言えることですが、どっちの道がベストかは、人生の最期まで分からないということです。
私はIBMにいた20代後半のときにマネジャーの道を選択して、EMCジャパンの副社長、日本オラクルの専務、アップル・ジャパンの社長と務めるようになりましたが、技術者として仕事をしていたらその後どうなっていたかと思うことがあります。プログラミングには自信がありましたので、コンピュータ業界か家電業界かは分かりませんが、おそらく有名なプログラマーとして名前が出ていたのではないかと想像したこともあります。
しかし、それも自分で選択したことなので後悔はありません。
人間、進める道は1つです。20代のうちにビジネスマンとしての方向をしっかりと定めることが大切です。
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