日本人は、サービスにお金を払わない:ずっと「安月給」の人の思考法(1/3 ページ)
あなたが勤めている会社の給料は低いですか? それとも高いですか? 前回は、業界によって給料に差が出ることを紹介しました。今回は、日本人のサービスについての考え方と技術の進歩について考えます。
集中連載「ずっと「安月給」の人の思考法」について
本連載は、木暮太一氏著、書籍『ずっと「安月給」の人の思考法』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
給料の上がる人と上がらない人は何が違うのか。そもそも給料とはどうやって決まるのか。で、どうすれば給料は上がるのだろうか。
「年功序列は悪!」と考えている、「生産性が上がれば、給料も上がる」と期待している、「チャンスはいつまでもある」と思っている、就業規則を読んだことがない、「会社の経費で落ちるか」をいつも気にしている、「人は見かけが9割」を理解していない。
そんな全国のサラリーマンに贈る本書には、いつまでも薄給の「あの人」みたいにならない思考のヒントが満載です。
ベストセラー『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)の著者である木暮太一が、1年の歳月をかけて完成させた渾身の1冊。
著者プロフィール:
木暮太一(こぐれ・たいち)
経済入門書作家、経済ジャーナリスト。
慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学在学中に自作した経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。
相手の目線に立った話し方・伝え方が「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。
『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)、『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』(光文社新書)、『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)など著書多数、累計80万部。
理由4 日本人はサービスにお金を払わないから
前回も紹介した右の「業種別の平均給与」をよく見ると、小売業の他にもう1つ目立つ業界があります。
「サービス業」です。この業界も給料が安くなりがちです。
「日本人は、モノに対してはお金を払うが、サービスに対してはあまり払わない」と言われます。僕はこれも『資本論』の価値基準が日本人に刷り込まれていることの現れだと思うのです。
モノには明らかに原材料費がかかっています。そして明らかに加工が必要なので、そこに「労力」がかかっていることがわかります。つまり、マルクスがいう「価値」が明らかなのです。
一方、サービスは違います。レストランでウェイターやウェイトレスが料理を運んできてくれても、それに対して「価値」があるとは(大きな労力がかかっているとは)あまり感じません。スタッフがいなければ料理が運ばれてこないので、彼らの労働に対して「使用価値」は明確に感じています。でも「価値」を感じていないのです。すごく乱暴な言い方をすると、「かけた労力は、料理を運んできた数十秒だけでしょ?」と思ってしまうのです。
海外ではレストランのウェイターやウェイトレスにチップを支払うこともありますが、日本では支払いませんね。また食事に対する対価も、原材料を基準にしていませんか? A5ランクの牛肉だから、有機野菜だったら高くてもいいけど、そうじゃなければ安くするべき、と。そこには料理人やサービスする人たちの腕や雰囲気は考慮されていません。
「おいしい店なら何度も通う。シェフの腕を考慮している」
「店員さんの応対が大好きで、常連になった。これは、お店の雰囲気を評価している証拠だ」
そういう反論もあるでしょう。しかしそれは、料理やレストランの「価値(労力)」ではなく「使用価値(おいしさ、居心地のよさ)」を評価しています。「価値」ではありません。だから高いお金を払わないのです。
化粧品に何万円もかける人でも、美容院ではお金を使わないことがあります。
日本人はアドバイスにお金を払わないとも言われます。せっかくアドバイスしてくれる人がいても、「アドバイス料」を払いたくないために、我流で試みて失敗する人が大勢います。
日本人は、形が見えないサービスに対して、「価値」を感じにくいため、高いお金を払いません。その結果、サービス産業の給料が安くなっているのです。
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