若手に煙たがられる“自慢話上司”になっていませんか?そのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2015年02月26日 08時00分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]
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体験談を話すときに気を付けるポイント

 a)は体験談によくありがちな失敗例、「結局、自慢話かよ」で終わってしまうケース。励ましているはずが説教臭くなっており、自慢しているように受け取られてしまいます。これを聞いた相手は心を閉ざしてしまうでしょう。

 b)は一見励ましているように見えますが、希望が見えない自虐ネタであるため、相手をさらにガッカリさせてしまうかもしれません。また、これを聞いた後輩はどうフォローすればいいのか分からず、逆に戸惑ってしまうでしょう。どちらも相手の心を動かしきれない“残念な”体験談と言えます。

 体験談を話すときは、言葉の中に「“イケテル自分”と“イケテナイ自分”を両方入れる」ことが大事です。先ほどの例で言えば、a)はイケテル自分だけ、b)はイケテナイ自分だけしか入っていません。イケテル自分だけをアピールすると相手は不愉快になりますし、逆にイケテナイ自分だけをアピールすると、相手にとって面白くない自虐ネタになってしまいます。

photo 自分の体験談は、ともすれば自慢話や説教に聞こえてしまうので注意が必要です

“イケテル自分”と“イケテナイ自分”を両方入れた体験談を

 両方を入れてストーリーを作ることで、聞く相手を引き込み、なおかつアドバイスが伝わりやすい体裁になるのです。その例がこちらです。

 「実は私も以前、同じようなミスをしたことがあってね。そのときは今の君以上に怒られて、正直仕事辞めようと思うくらい辛かったよ。でも、そこから必死に続けていくうちにコンペで提案する機会をもらえて、選んでもらえたんだ。お客様は『提案もよかったけど、あれ以来、小さな事でも手を抜かずにやってきてくれたから』とおっしゃってくれてね。本当にうれしかったな。今ではミスする前より信頼関係を築けたと思ってる。だから失敗したときこそ逃げずに仕事を続けてみよう。必ずもう一度関係は築けるはずだよ」

 この「イケテル」と「イケテナイ」の部分はどちらが先でも構いません。まずはこの2つの要素を入れることからはじめてみましょう。

 さらに最も感情を込めた部分に自分の感情をセリフとして入れると、思いが伝わりやすくなりますし、最後に何か自分の考えが入っていると、話がまとまりやすくなります。これらすべての要素を入れると話が長くなりがちですが、話が長くなるだけで説教っぽく聞こえるので注意しましょう。自分の思いを込めても、シンプルに話せるようにするには、それなりの意識と練習が必要です。

 また、こうした話は急にはひらめきにくいものなので、日ごろから自身の経験を整理し、棚卸しをしておくのがいいでしょう。適切な体験談は、相手との心理的な距離を縮め、自分の言葉が相手の心に響く素地を作ります。部下や後輩がいるならば、使いこなせるに越したことはありません。

今回のまとめ

Q:若手に仕事の醍醐味を教えたいのですが、なかなか心に響かないようです。

A:自身の体験談を話してみてはいかがでしょう。醍醐味だけでなく、励ますときやイメージしにくいことを説明するときにも使えます。「イケテル状態」と「イケテナイ状態」の両方を話の中に含めるのがポイントです。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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