何気ない会話に潜む“地雷”、どう対処すればいい?そのひとことを言う前に

知らず知らずのうちに相手の機嫌を損ねてしまう――誰でも一度や二度は会話で“地雷”を踏んだことはあるはず。今回はその地雷を2パターンに分け、回避法や踏んでしまったときの対処法をまとめてみました。

» 2015年01月29日 08時00分 公開
[岩淺こまきBusiness Media 誠]

連載「そのひとことを言う前に」

 職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。


 ビジネスコミュニケーションで気を付けるべきポイントを紹介している本連載ですが、今回は少し趣向を変えて、雑談や日常会話にスポットライトを当ててみます。楽しく会話をしていたはずが、気づかぬうちに相手の機嫌を損ねてしまった……。誰でも一度は“地雷”を踏んだ経験はあるのではないでしょうか。

 そんな知らず知らずのうちに踏んでしまいがちな“地雷”を2つのパターンに分け、相手の顔色が変わるポイントや、その対処法をまとめてみました。

謙遜しすぎで「間接的に失礼」

ケースA:転職を勧める

A子さん: 私、そろそろ転職しようかと思ってて……。

B子さん: そうだよね。いつまでもこの会社にいても良くないと思う。業界の先行きも見えてるし給料も安い。私は旦那が違う会社で本当に良かったわー。私じゃここにしかいられないけど、がんばってね。

A子さん: (夫もこの会社なんだけど、嫌味なの!?)

ケースB:新築の話題

Cさん: 新築ですかー、おめでとうございます。

Dさん: いやいや。新築といっても○○区の片田舎ですからね。そんな大層なところではないですよ。

Cさん: (俺の家の方がもっと遠いんだけどなぁ……)

 知らないうちに相手を不愉快にする代表的なパターンがこちらです。

 どちらのケースも、謙遜のつもりで言った内容が、間接的に相手や相手の環境をおとしめ、嫌な気持ちにさせてしまっています。それぞれ相手の状況を知っていれば、このような話の運びにならないはずです。とはいえ、相手を熟知するには時間がかかるものですし、口をついて出てしまうこともあるでしょう。仮にAさん、Cさんの状況を知っているならば、悪意と捉えられても仕方ありません。

 やや乱暴な言い方ですが、“謙遜しすぎは危険”と考えておくといいでしょう。相手を不愉快にさせることがなくても、意味もなく心理的な距離を感じさせてしまうこともありますし、特に相手が年下であれば、返事に困らせてしまうこともあるでしょう。日常的な会話なら、極度の謙遜は避けたほうが、円滑なコミュニケーションにつながります。

photo 誰でも一度は“地雷”を踏んだ経験があるのでは

“上から目線”を生み出す「Youメッセージ」

 会話をしている相手に向かって、“直球”でモノを言って不愉快にさせてしまうパターンもあります。もちろん、相手にはっきりと内容を伝えるのはコミュニケーションの基本ですが、“上から目線”という印象を与えてしまうと、失礼だと思われてしまいます。ケースAの場合、こんな会話になることも考えられます。

A子さん: 私、そろそろ転職しようかと思ってて……。

B子さん: そうした方がいいよ! あなた、この会社にいても良いことないし、早く動いた方がいいと思うよ。

A子さん: (え? そんなに私、この会社に向いてないのかな……?)

 A子さんは雑談とも相談ともとれるような、あいまいなメッセージを出していますが、B子さんはそれを相談と受け取り、強めのアドバイスをしました。アドバイスを返すこと自体は大きな問題ではないのですが、その言い方に問題があったようです。

 上から目線になりやすいのは、相手を主語にして話す「Youメッセージ(あなた主語)」という話し方をしているときです。「あなたはこうすべき」「あなたはこういう人」というような決めつけの印象を与えるため、特に否定的なメッセージの場合、相手は自分が否定されたような感覚に陥ってしまいます。

 最近では「コミュニケーションに気をつける」という意識が高まっていることもあり、このパターンを見かける機会は減りましたが、感情が高ぶるとつい言ってしまうこともあるので、気をつけましょう。

 “決め付け”の印象を与える言い回しをできるだけ避けるのがコツですが、このケースのように相手がはっきりとしたアドバイスを求めているのか、判断がつかない場合は「そっか。転職考えてるんだ」と、相手の発言を繰り返す「オウム返し」で相手に会話を続けてもらい、様子をうかがうのも有効です。

常に自分の言葉を振り返る

 このほかにも、褒めてるつもりが“たとえ”が悪くて逆に機嫌を損ねてしまったり、軽い気持ちで話を振ったつもりが、相手にとっては答えづらい話だったりなど、相手の心象を悪くしてしまう“地雷”はどこにでも潜んでいます。

 地雷の爆発を繰り返し「何だか感じが悪いな……」と思われたらコミュニケーションの頻度は減ってしまいます。周囲の印象が悪化し、関わってくれる人が減ってくると、自分からコミュニケーションの努力をしなければならなくなります。そうなると、コミュニケーション自体に疲れや面倒くささを感じることにもなりかねません。

 そうならないためにも「このコメントちょっとまずかったかな」と、常に自分の言葉を振り返ることが大事です。よいか悪いかを意識することで、弁解することもできるようになります。必要以上にコミュニケーションを怖がることはありません。たとえ誤解を生じさせてしまっても、すぐに「あ、ごめんなさい」と素直に謝ればいいだけの話。“地雷”を恐れることはないのです。

今回のまとめ

Q:自分は楽しく話しているはずなのに、相手に“は?”という表情をされてしまいます。そんなに失礼な話をしているつもりはないのですが……。

A:知らず知らずのうちに、失礼なコメントを積み重ねているのかもしれません。コミュニケーションの感度を上げ、誤解が生まれたら、都度解いた方がよいでしょう。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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