スマホでの領収書の撮影はNG――平成27年度の税制改正のポイントについてマネーフォワードの公認会計士が解説した。
マネーフォワードは1月23日、2015年の会計ソフト業界のトレンドを解説した。個人事業主や中小企業が気になっている「領収書などのスキャナ保存」や「マイナンバー制」など、平成27年度の税制改正とクラウド対応についても解説があったので、そこを中心にお伝えしよう。
まずはスキャナーによる電子保存の概要について。すでにスキャナーを使い、帳票を電子的に保存することは可能だ。だが、これまでの対象書類には「3万円以内の」領収書という金額の基準が存在していた。
平成27年度の税制改正では、この金額条件が廃止。さらに、電子署名や大きさ情報の保存が不要になる。
しかし、電子保存のためにはまだ条件がいくつか残っている。領収書や契約書などを差す「重要書類」の電子保存のためには、適正な事務処理の実施のための規定の整備と、それに基づいた事務処理が行われていることが条件だ。また、これを担保するための内部統制も整備されている必要がある。
それだけではない。そもそも電子保存のためには「タイムスタンプ」が必要とされている。これは単なるファイルの属性情報だけではなく、財団法人日本データ通信協会が定める基準を満たすものとして認定された時刻認証業務による、時刻認証が必要だ。
公認会計士の山田一也氏は、規制が大幅に緩和されたことは認めつつも「まだまだ面倒であるというのが実情」という。クラウドの力を生かすには、スキャン要件として「スマホでの領収書撮影」レベルの簡単さが求められる。
電子化された領収書のデータを基に自動仕訳を行い、日次での決算情報を分析に使うという仕組みができれば、「これまでは大型のERPが必要だった日次での経営分析を、中小企業においても取り入れることができ、経営判断の迅速化が加速する」と山田氏は推測する。そのためには、もう少し要件が緩和されることが必要だ。
次に「マイナンバー制度」について。そもそもマイナンバー制度は住民票を有する国民全員に12けたの個人番号を割り当てるもので、2015年10月に通知される。また、法人に対しても13けたの法人番号を同時期に割り当て、2016年1月から順次利用できるようになる。
実務上大きな変更点は、各種申告書や法定調書に個人番号、法人番号の記載が必要になることだ。例えば支払調書には個人番号、法人番号を記載するため、発注先の個人番号を収集する必要がある。また、給与所得の源泉徴収票には控除対象配偶者や扶養親族の個人番号も記載するため、これらの番号を収集、保存する必要がある。山田氏は、「これらの作業は中小企業にとって事務負担が大きい」という。
さらに大変な作業は「本人確認」だ。山田氏は「番号の確認」とともに「身元確認」を実務上どう実現していくかを考えるべきだという。
例えば、本人確認は郵送、オンラインでの本人確認が認められているため、ICチップを読み取るだけでなく、身分証明書をPDFとして送付してもらう方法も可能だ。山田氏はオンライン上での本人確認が実現できるのは「クラウドの力」だとも言及する。
マイナンバー制度への対応は困難かもしれないが、その後は大きなプラスに動く可能性もある。今後は国税通則法の改正により、預貯金情報についてもマイナンバーで管理するという方針がある。これにより透明性の高い税制が実現できる。
同様の施策を打ち出しているのはデンマークだ。マネーフォワードによると、デンマークでは税金計算に必要な情報を、国税局が企業や銀行、住宅ローン会社、年金機関などから直接情報を収集し、書類を作成するという。この結果、納税者は税金ポータルサイトにログインし、国税局が作成した文書を確認し、承認するだけで納税が終わるのだ。
「まだ、日本では実現できる環境になっていないが、マネーフォワードはデンマークのような理想的な確定申告作業に近いことができるようにサービスを強化していく」(山田氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.