“指示待ち若手”をつくる悪魔のささやきそのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2015年01月15日 08時00分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]
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指示待ち人間を生み出す言葉に注意せよ

photo 少なくとも間違っていない、上司に怒られないという“正解”を与えられ続けることで、指示待ちの姿勢が育ってしまいます

 こうした「いいから、黙って、やれ」というのは、指示待ち人間を作る“魔法”の言葉です。

 忙しい現場からすれば、「今は言われた事だけやってほしい。経験を積めばだんだんと意味が分かり、そのうち解決する」という思いがあるのかもしれません。忙しくて構っている時間がないという場面もあるでしょう。

 しかし、そう言われた部下にそんな上司の思いをくむ余裕はありません。逆に「疑問を持つな」という印象のみが伝わります。威圧的な言葉を使わずとも、部下に有無を言わせない雰囲気や「自分の言っていることが絶対に正しい」といった態度だけでも、相手にはそういう印象を与えてしまいがちです。

 こうしたやりとりを繰り返し、正しいかは分からないが、少なくとも間違っていない(上司に怒られない)という“正解”を与え続けることで、Aさんのように「指示待ち」が楽、逆らってもムダといった認識ができあがってしまうのです。

 この“言われた事を素直にこなす部下”は、新人のころは使い勝手がよくても、時が経ち若手、ないしは中堅ともなると「なんで言われたことしかできないんだ、コイツは」という印象に変わります。本人が辛い思いをするのはもちろん、上司の首をも絞めることになってしまいます。

“答え”をコントロールするのが上司の腕の見せどころ

 解決策は「いいから黙ってやれ」ではなく、指示とともに目的や背景を伝えることですが、いつも目的や背景、仕事の進め方などの“正解”を伝えれば、これもまた上司に依存してしまい、待ちの姿勢が育ちます。面倒見がいい人や、仕事がデキる人ほど陥りやすいワナと言えるでしょう。

 おすすめは、基準に沿って目的や背景を与えたり、部下に考えさせたりとコントロールする方法です。

 初めて行う仕事ならば、指示とともに目的や背景を伝えるのが適切です。似たような仕事や2回目以降の仕事なら、指示だけで十分。指示するときに「目的はなんだと思う?」と問いかければよいのです。仮に初めての仕事でも、今までの経験から少し考えれば分かるであろうことには、部下に考えさせるのも手です。この線引きが上司としての経験が問われる部分でしょう。

 Aさんの例であったように、初めての仕事で目的や背景を伝えたいが、時間がないので急いで着手してほしいこともあるはずです。そのときは「いいからまずやって!」で構いません。しかし、後でしっかり時間をとって教えるなり、この作業にどういう意味があったのか考えさせることを忘れないように。

 主体性のない部下を見て「自分でやった方が早い」と考える場面もあるかもしれません。しかし、それではいつまで経っても部下は育たず、自分の負担ばかりが増えるという“負のスパイラル”にハマってしまうでしょう。この部下に「自分で考えるくせ」をつけさせるためにはどう工夫すればいいか、本当にこの部下は指示待ちなのか。今一度疑ってみることが、問題を解決するきっかけになるかもしれません。

今回のまとめ

Q:いわゆる“指示待ち人間”が部下になってしまって困っています。

A:指示待ち人間をつくる言葉を使っていませんか。仕事の指示をするときは、目的や背景を基準に沿って与えたり、部下に考えさせたりとコントロールするのがおすすめです。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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