組織で業務を進めていくうえで人間関係は避けて通れません。自分や他人の感情を適切に知覚し、自己表現できる能力「EQ」とストレス反応には関連性があるようです。
職場の人間関係は、ストレス要因の中でも大きな割合を占めます。組織というものは、役割分担と調整を繰り返しながら業務を進めていくものですから、人間関係を抜きにした成果を語ることはできません。また、組織のポテンシャルを引き出すためには人間関係力を高めていく必要があります。
筆者の勤務する会社では、「EQ(感情知能)」に関するアセスメントを実施して、その結果をストレス反応(いらいら、不安、抑うつなど)と関連付けて分析しています。今回は、人間関係に関連した要素の中でストレス反応に影響を与えるものを3つ取り上げてみます。また、適切な自己主張をするための手法を紹介します。
1つは「社会的自己意識」です。これは自分が周囲にどのような人間として映っているかを知ろうとする傾向です。この要素が高いと、自分に対する評価や噂にとても敏感になり、周囲の期待に沿った行動をとろうとする傾向があるとされます。
この要素が高い人は、言葉遣いや態度は丁寧で、集団や組織のルールにはうまく適応して行動できるようです。しかし、いつでも周囲の目や世間を気にする傾向があるので、それが強くなり過ぎると自分にとって重要な価値を見失い、身動きが取れなくなることもあり得ます。
そうならないためには、自分というものをきちんと持つことが大事になります。他人に振り回されないようにするために、誰の目が気になるのか、それはなぜなのかを整理してみることが重要です。また自分にとって重要なことを書き出してそれを実行する計画を立て、他人の評価を気にせずに集中してみるのもよいでしょう。
2つ目は「感情的被影響性」です。この要素が高い人は他人の感情につられて、自分もうれしくなったり悲しくなったりします。人が動揺したり、怒ったり神経質になったりというネガティブな感情にも引っ張られ、あたふたしてしまいがちです。このタイプは自分の気持ちと他人の気持ちの区別がつかなくなってしまい、自分にとって価値のある行動をとれなくなりがちです。
悪影響を低減するには、「他人が感じていることと自分が感じていることは違うもの」ということを意識して、一歩引いてみることが重要です。強く感情を揺さぶられた経験をノートに書き出してみましょう。また、相手に影響を受け過ぎていると感じたら、ときにはその場から離れてみるのも1つの手です。
最後は「自己主張性」です。自分の意見や判断を率直に伝えることを指し、「アサーティブである」とも言います。
適切な自己主張ができる人を「アサーションタイプ」といいます。このタイプの人は、自分を大切にし、なおかつ相手も大切にする姿勢をもってコミュニケーションができます。この考えを身につければ、対人関係は円滑になり、人間関係のストレスを減らせます。
一方で、自己主張性が低いことを「非主張タイプ」といいます。このタイプの人は、自分さえ我慢して黙っていればよい、相手に嫌われたくないと相手の言うことに同調する傾向があります。相手からは従順で、場合によっては都合のいい人間と軽くみられることもあります。
逆に「攻撃的タイプ」は相手の言い分や気持ちよりも自分の言い分や気持ちを優先させてしまう人たちです。相手のことを軽んじて人間関係が長続きしないことが多くなります。
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