なぜ弥生会計の中の人はTwitterでユーザーに“絡み”まくるのか?「艦これ」「アイマス」も必須知識(1/2 ページ)

「開業届ってどう出すの」「確定申告、いつまでだっけ」――そんなTwitter上のツイートを見つけて“絡んで”くるツイッターアカウントがある。SNS時代の新しいユーザーサポートの形を「中の人」に聞いた。

» 2014年12月26日 12時00分 公開
[Business Media 誠]

 あなたの知り合いに個人事業主がいたら、年末が迫るこの時期には「確定申告、面倒だなあ」とか「青色申告のやり方忘れた」というツイートが流れてくるかもしれない。私たちは「大変そうだね」「がんばって」くらいしか返信できないが、これを商機に変える企業もある。

 それは、「弥生会計」や「やよいの青色申告」といった会計ソフトで中小企業や個人事業主に圧倒的なシェアを持つ弥生。ツイート主が同社の顧客ではなくとも、Twitter上に流れる会計に関する悩み事や不安に対して、専門知識を持つサポート部隊が積極的に“絡んで”いくのだ。今回は、同社の岡本浩一郎社長と、ソーシャルネットワークサービス(SNS)上のキャラクター「弥生のヨシ」の中の人に話を聞いた。

編集部注:本来「絡む」という言葉には「言いがかりをつけて相手を困らせる」といったネガティブなイメージがあるが、SNS上で若者を中心に使われる「絡む」は「積極的に話しかけて親しくなる」という意味合いが強い。

社長が1人で始めたアクティブサポート

 一般的に、顧客に対するサポートといえば、顧客側から問い合わせなどが発生してから行う受動的なものだ。だが、TwitterやFacebookなどのSNSの普及により、そのタイムライン上に流れる不満や疑問をキャッチして企業側から積極的に“絡んで”いく「アクティブサポート」という手法が生まれた。

 上手に運用できれば、新規ユーザーの獲得につなげたり既存ユーザーの離反を防げたりする。また、商品やサービスの改善点を見つけられる。しかし、さじ加減を間違えてしまえば、ユーザーは言葉の元の意味どおり「絡まれた」と受け取り、炎上につながる可能性もある。成功のポイントはどこにあるのだろうか?

 岡本社長がTwitterを使い始めたのは2010年ごろ。自身が積極的だったのではなく、社員が「用意しました、使ってください」とアカウントを取得したのだという。

 「最初は、何を書いたらいいのか分からず、警戒しながらおそるおそる始めました。でも、ユーザーに話しかけてみるとすごく喜んでもらえる。ポジティブな反応が多くて『これはいいな』という手ごたえがありました」(岡本社長)

 自分が使う製品を作っている会社の社長が個人的に話しかけてくれば、ユーザーはびっくりすることはあっても嫌な気持ちにはならないだろう。むしろ、より親しみが増す可能性が高い。だが、いつまでも個人でやり続けようとは思っていなかったという。

 「すぐに、個人でやるには限界もあるなと感じました。対応の品質や基準にばらつきが出て、社長業が忙しいときにはツイートを拾うこともできません。ただし、社長命令で社員に『やれ』というのは避けたかった。現場から『私たちでやりましょう』という声が上がってくるまで機が熟するのを待っていました」(岡本社長)

「弥生のヨシ」が生まれるまで

 中心となったのがマーケティング本部にいた吉川倫教氏や上原昌代さんら6人の社員だった。ちなみに「弥生のヨシ」は吉川氏をイメージしているが、本人そのものではないのだそうだ。

 業務が現場に移ってからも手探りは続いた。まず、Twitterどころかユーザーサポートの経験者がいなかった。毎日のようにチームで集まり、資料をあさったり岡本社長の過去ログをたどったりしながら、何をどのようにやっていくのかを試行錯誤した。

 「社長のツイートなら何を言ったとしても責任が取れます。でも現場だとどこまで踏み込んでいいのか。そこで対応に悩んだケースを蓄積して社長に相談し、会社としてどうすべきかを体系化しました」(吉川氏)

 ユーザーのツイートを検索したり、「弥生のヨシ」としてツイートしたりするためのツールも「まずは使えるものからどんどん使ってみた」という。初めのころはYahoo!のリアルタイム検索に関係しそうなキーワードを入れ、ツイートは「Hootsuite」を使った。今では「カスタマーリングス ソーシャル」という専用ツールを導入している。

 「Twitterのアイコンも変えました、当初はプロジェクトのロゴでしたが、無機質な感じで、話しかけたときの相手の反応も芳しくありません。やはりTwitterは1対1のコミュニケーション。そこで『弥生のヨシ』が生まれたのです」(上原さん)

 「弥生のヨシ」は、どう話しかけるのか、受け答えするのか、そしてどこまでハメを外して親しみやすさを演出するのか。再び、チームが集まってキャラ付けの試行錯誤の繰り返し。人間くささを生み出す転機となったのは吉川氏のツイートだった。

 「雪道で転びました」――それまでは「弥生という看板に傷を付けてはいけない」と身構え、ツイートする内容も会計業務にガチガチだった「弥生のヨシ」に血が通った瞬間だった。中の人のプライベートなツイートが適度に混ざることで、リツイートやお気に入り登録が増えたのだ。

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