自分から離れて、自分を見つめる「働く意味」がわからない君へ

予想外のことが起き、危機に追い込まれたときにこそ、人間は、自分でも知らなかった力を発揮できるのです。決して焦る必要はありません。

» 2014年11月17日 11時00分 公開
[諸富祥彦,Business Media 誠]

連載:「働く意味」がわからない君へ について

本連載は、諸富祥彦著、書籍『「働く意味」がわからない君へ ビクトール・フランクルが教えてくれる大切なこと 』(日本実業出版社)から一部抜粋・編集しています。

 「希望の職業に就けていない」
 「今の部署ではやる気が起きない」
 「上司が評価してくれない」
 「失敗するのが怖くて動けない」

本書は、このようなビジネスパーソンが抱きがちな48の悩みに、ビクトール・フランクルの言葉と彼が創始したロゴセラピーの考え方をもとに答えます。

ロゴセラピーとは、フロイトの「精神分析」、アドラーの「個人心理学」に続く3つめの潮流として位置付けられている“生きる意味”の発見を援助する心理療法です。

「あなたには、あなたにしかできない使命がある」。『夜と霧』の著者であり、人生の意味を見つめ続けたフランクルが贈る運命のメッセージです。

日々の仕事に「意味」を見い出し、「使命感」を感じて取り組むためのヒントが詰まった一冊です。


「予想外なことが起きると、焦ってうまく対応できません」

 フランクルは、人間精神の働きの1つとして「自己離脱」、セルフ・ディタッチメント(self–detachment)を重要視しています。人間の精神に自己離脱の力があることの重要性を説くのです。自己離脱とは、自分自身から離れて自分を見つめる精神の働きのことです。

 私が生命の危険にさらされたとき、例えば登山のときにずるずると岩から滑り落ちたときなど、私は常にその数秒間に(あるいはおそらくもっと短い間に)急に起こった外界の出来事に対する一種の態度、好奇心を知っていた
(『夜と霧』)

 ここで重要になるのは、フランクルの言う「心理的次元」と「精神的次元」を区別して考えることです。心理的次元というのは、寂しくなったら寂しいし、苦しくなったら苦しい。嬉しいときには嬉しくなる。そうした、自然と湧いてくる感情の働きの次元のことです。それに対して精神的次元は、この心理的次元の働きと対立します。このことをフランクルは、「精神─心理拮抗作用」と呼びます。

(写真と本文は関係ありません)

 これは、自分の感情がある状態になったとき、その状態から自分を引き離し、1つ離れたところから、今、自分自身がどんな状態にあるのかを見つめる力、そこで起きていることを俯瞰(ふかん)するまなざしを持つ力のことです。

 フランクル自身が体験したように、登山をしていてズルズルと岩から滑り落ちて生命の危機にさらされるといった緊急事態に追い込まれたときに、瞬時にして自分自身を1つ離れたところから見る──そんな心の働きを人間は持っているのです。

 そうした危機的事態においては、「自己離脱」という精神作用がいわば自ずと発動し始めるのです。

 本当に追い込まれたときに、なぜかふと、自分で自分自身をながめて、思わず笑ってしまうことがあります。こういった力は、とりわけ生命の危機に追い込まれるような緊急的な事態で自動的に引き出されるのです。

 予想外のことが起き、危機に追い込まれたときにこそ、人間は、自分でも知らなかった力を発揮できるのです。ですから、決して焦る必要はありません。

自分が成長している実感が得られない君へ

自分から離れて、自分を見つめることができれば、危機的な状況の中で想像以上の力を発揮できるはずです。


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