部下から「尊敬できない上司」と思われないためにはどうすればいいのか。ヒントになりそうな研究結果が『職場学習の探究』(生産性出版)という本に載っている。
本書の脇本健弘氏の研究に、「部下からの成長認知が部下の内省支援と正の相関がある」――といったことが書かれていた。簡単に言うと、部下は、“常に成長するための努力をしていることが分かる上司”から指導を受けた方が効果が高いということだ。
だから上司は、自らが常に成長し続けていなければならないし、先の例のように、「もう歳だから」「成長にも限界があるし」などと口にするのはよろしくない。
「うちの上司って、いつも業界の最新情報を把握しているし、いろんな本を読んだり勉強会に行ったりしている。しかも、それを惜しみなく、部下たちとシェアしてくれるんだよなあ」――そう思われている上司であれば、部下も刺激を受けて“学ぼう”という気になるはずだ。「学びなさい」と命令するよりも効果が高いだろう。
勉強するのに年齢は関係ない。ある60代の経営者の方は、忙しいだろうにいつ読んでいるんだろうと思うくらいの読書量で、そこに書かれた言葉や数字をごく自然に会話の端々で引用する。話すたびに「こういう方と対等な会話力を身につけるためには、私ももっといろいろな本を読んだり、経験を積んだりしなければ」と思う。
成長するためには自分を高めるための努力が必要だが、それを“ツラい”と思わず、人としての幅を広げるためだと思って楽しく取り組みたいものだ。それがきっと、人を率いる自信にもつながることだろう。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
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