「不満」をアピールの原動力に変える明日を変える働き方(1/2 ページ)

会社や仕事への不平や不満は誰でもあります。しかし、会社にそれをぶつけたところで、ただの愚痴では相手にしてもらえません。不満をバネにし、自分のやりたいことを始めて、アピールしてみてはどうでしょうか?

» 2014年09月22日 11時00分 公開
[金井壽宏,Business Media 誠]

集中連載「明日を変える働き方」について

本連載は、金井壽宏著、書籍『「このままでいいのか」と迷う君の 明日を変える働き方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。

 「この仕事は、自分に合っているのだろうか?」
 「今のような働き方が、いつまで続くんだろう……」

迷いながら働く人のために、キャリア研究の第一人者が、仕事の本質から会社との付き合い方、キャリアの捉え方まで、読者と一緒に考えていきます。

長い仕事人生にはアップダウンがつきもの。ワクワクしながら前向きに取り組める時期もあれば、失敗や思わぬ異動に落ち込む時期もあるのが当然です。

本書では、一般の企業で働く若手14名へのインタビューをもとに、仕事の「モティベーション」、そして「キャリア」の悩みから抜け出し、成長していくための考え方を紹介します。

 ・いったい自分は、何のために「働く」のか?
 ・「組織」とどこで折り合いをつけるか?
 ・これからの「キャリア」をどうデザインするか?
 ・もっと仕事に夢中になるためには?

など、キャリアの入口、あるいは途中で立ち尽くしている人が、自分なりの「働き方」をつかむための1冊です。


ビジネスプラン・コンテストが変えた働き方

それまでの不満をバネに、新しい仕事に果敢に挑戦し、仕事の面白さを見つけた20代の女性もいます。

IT企業、コンシューマー事業部のNさん(24歳、女性)の場合

 Nさんは大手のIT企業に勤めて3年目。就職活動での会社説明会やOB訪問の際、社長の話を聞いて「この人の下で働けるなら」と思って就職を決意します。またその会社では、「社員の1人1人が社長のように仕事をする」という考え方を大切にしており、その価値観にもとても共感することができました。

 ところが入社後に配属されたのはインターネットのアクセスを分析する部署で、事前に考えていたような仕事とは、まったく異なるものでした。

 検索エンジンを通じて、クライアントのWebサイトに訪問する人を増やすため、どんなキーワードで検索する人が多いのか、どういう経路をたどってくるのかをPCで淡々と分析します。ひたすらPCと向き合い、数字を入力する日々が続きます。間違えて数字を入力すると分析結果が大きく変わるので、慎重さも求められました。間違いが許されないストレスと、毎日終電になるほどの忙しさにもかかわらず、作業としてはコピー&ペーストを繰り返すだけの単調な仕事でした。

 就職する際、会社は「何か新しいことをしたい」「どんどん成長したい」という人材を求めていると聞き、自分もその基準で採用されたと思っていたのに、機械にとって代わられるような仕事をしている現状が嫌になってきます。上司に「異動したい」と何度言っても聞き届けられず、どうすれば今の状況を打開できるのか悩む日々が続きました。

 転機が訪れたのは、入社2年目のとき。社内でビジネスプラン・コンテストが開催されました。「この先もオペレーターの仕事をするのは嫌だ」と思っていた彼女はそれに応募します。コンテストには毎回30〜50名の社員が応募しますが、コンテストから実際のビジネスに事業化されたものは、それまでありませんでした。

 Nさんは、高校生のころからネイルアートにはまっていました。ラインストーンを使うなど、サロンでやってもらうような凝ったネイルアートを自分でするのが趣味だったのです。

(写真と本文は関係ありません)

 そして、そのネイルアートの材料を使って、当時流行しはじめていた携帯電話をデコレートするビジネスを思いついたのです。携帯やスマートフォンなどの外面をラインストーンで飾るための商材を販売する新規事業をはじめれば、時流に乗って女性の間に人気が出るのではないかと考えました。

 「ビジネスとして事業化したい」という思いよりも、「自分の成長を感じる瞬間がほしい」という思いが先行していました。

 しかしNさんはそれまで、ビジネスや事業について考えた経験はまったくありませんでした。「ビジョンって何?」「ビジネスモデルって何?」というところから勉強をはじめます。応募しようとしていた同期の社員8人で集まり、役員にレクチャーしてもらうなどの勉強会も開きました。

 そして約1カ月半、週末のほとんどを費やして準備し、コンテストに応募した結果、提案したプランが通り、会社ではじめてコンテストからの事業化が実現することになりました。Nさんはオペレーターから、たった1人で新規事業を運営するプロデューサーへと転身します。

 Nさんは、「これまでにない、まったくの新規事業を立ち上げるのは、自分1人の力だけでは絶対に無理だ」と思いました。そこですぐに数人の上司にどうすればいいかを聞いて回ります。上司たちも惜しみなくサポートしてくれ、彼女の携帯電話をデコレートする商材を販売する事業は無事にスタートしました。その後も「20代の自分1人で営業や商談に行っても相手にしてもらえないだろう」と思い、役員の1人に自分の上司になってくれるよう頼みました。

 Nさんはどんどん周りを巻き込み、自分だけではできないことでも、社内の上司や先輩に質問をすることで、毎日発生する問題や課題をクリアしていったのです。

 その結果、Nさんのはじめた事業は小さいながらもきちんと収益を生み出し、会社の中でもユニークなビジネスとして注目を集めるようになりました。

 最近のNさんは、学生時代の友人と会うとき、仕事の近況報告はしても愚痴は一切言わないそうです。今の仕事は自分で新規に立ち上げたビジネス。それに対して不平や不満をいうことは、自分自身の至らなさや、努力不足を告白していることにしかなりません。

 新しく何かを自分ではじめることは、誰のせいにもできないということでもある。Nさんはそのことを学びました。

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