会計ソフトの雄、弥生が考える「新しいカスタマーサポート」のかたち札幌カスタマーセンターで聞いた(1/3 ページ)

中小企業や個人事業主向けの会計ソフトとして圧倒的シェアを持つ弥生は、有償のカスタマーサポートにも注力している。高いスキルと知識が求められるスタッフ育成に向け同社がとった施策とは?

» 2014年09月04日 13時00分 公開
[岡田大助Business Media 誠]

 総務や経理担当者の業務が1年を通じて最も忙しくなるのは年末調整から確定申告へと続く12月ごろから翌年3月だろう。それと期を同じくして繁忙期に入る場所があった。業務ソフトメーカー、弥生のカスタマーセンターだ。

 同社のカスタマーセンターは、大阪(210席)と札幌(420席)の2拠点。今回は、「2014年危機」に備え大増床したという札幌センターを訪問し、同社が考えるこれからの新しいカスタマーサポートのかたちを聞いた。

札幌 札幌カスタマーセンター

40万以上の事業者が加入する有償サポートサービス

 弥生といえば、中小企業や個人事業主向けの会計ソフトで圧倒的なシェアを持つ会社。クラウド会計アプリの登場で活気づいた市場環境の中で「弥生会計14」はシェアをさらに伸ばし、本数ベースで68.7%、金額ベースで81.7%を記録した。

 同社製品を購入したユーザーに対しては、年間契約の有償サポート「あんしん保守サポート」を提供している。同サービスは3つのカテゴリー(2014年10月からは4カテゴリー)に分かれており、最大で30種類のサービスメニューが利用できる。

札幌 主なサポート内容

 例えば、「製品保守サービス」では操作サポートだけでなく法令改正に対応した最新版への無償アップデートも行う。「業務ヘルプデスク」では、仕訳相談や確定申告相談など日々の業務で発生する困りごとを解決する。「業務支援サービス」は中小企業では常設が難しい総務部門や情報システム部門のサービスを代行する。今後は「給与・労務」業務へと拡充する。

 2014年10月からは「製品活用サービス」を新設。すでに提供済みのデータバックアップやデータ共有に加えて、クラウド技術を活用するスマート取引取込も支援する。銀行口座やクレジットカードの取引データを自動的に取り込む機能は2014年7月から「YAYOI SMART CONNECT」を通じて「やよいの白色申告オンライン」に実装されたが、今秋リリースを予定する「やよいの青色申告オンライン」にも搭載される。

 ユーザーは必要なサポートに応じて「セルフプラン」「ベーシックプラン」「トータルプラン」を選ぶことになる。例えば、「弥生会計 スタンダード」ではそれぞれ2万8080円、3万2400円、4万7520円、「やよいの青色申告」では9720円、1万2960円、2万1600円(通常年間価格/税込)となっている。

 これを高いと見るか安いと見るかはユーザーそれぞれだが、結局のところ、毎年のように変わる税制や法令に応じて会計ソフトもアップデートしなければならないことを考えれば、最新版の無償提供だけでも申し込む価値があるだろう。実際に弥生シリーズ購入者の76.1%があんしん保守サポートに新規加入し、継続率(更新率)は86.6%と高い。

年間100万件を超える問い合わせに対応

 さて、カスタマーセンターへの問い合わせのほとんどは電話だ。平均すると年間で約80万件に対応してきた。だが、量、質ともに改善点が残されていた。ざっくりといえば、前者は「放棄呼(センター着信前にユーザーが電話を切ってしまうこと)」を、後者は「強制切断(問い合わせ内容に答えられず、通話を終了すること)」を減らすこと。

岡本浩一郎 岡本浩一郎社長

 データでいえば、「総対応率」(目標88.0%)と「電話応対満足率」(同90.0%)を上げることだ。ただし、岡本浩一郎社長は2014年度に限っては「総対応率」向上に注力し、2013年10月に札幌センターを当時の2倍となる420席に拡大した。それは「2014年危機」への対策の1つだった。

 同社がいう2014年危機とは2つの要素に分けられる。1つは17年ぶりとなった消費税率の引き上げ、もう1つは10年近く使い続けられてきたWindows XPのサポート終了だ。岡本社長は「どちらか1つだけでも大きな波といえるのに、それが同じタイミングでやってきた」と笑いながら振り返る。

 実際にピーク時の年末から4月にかけて問い合わせ件数は急増し、2014年度の処理件数は120万件以上になった。だが、緒戦となる年末調整期には着信数が16%増えたものの処理件数は43%へと大幅な改善に成功。また、確定申告や消費増税があった最繁忙期の3月から4月にかけては対応件数が前期比1.8倍以上となったが、これも乗り越えた。通期での総対応率は目標の88.0%を上回る88.3%を見込み、「合格とはいえないが、健闘したといえるレベルを達成した」(岡本社長)と手ごたえを感じている。

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札幌
札幌 カスタマーセンター内の各所にリアルタイムでの応答率が表示される
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