給料に納得がいかない! と思ったら“会計視点”で考えてみる仕事力を高める会計の「知恵」

こんなにたくさんの案件を取っているのに、どうして給料が上がらないのか――。そんな気持ちも、会計視点で会社を見れば変わってくるはずだ。

» 2014年07月11日 11時37分 公開
[房野麻子,Business Media 誠]
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対談「仕事力を高める会計の「知恵」」について

『江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本』 『江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本』(眞山徳人/日本実業出版社)

仕事をしていく上で、「もうかったかどうか」を意識するのは重要なこと。つまり、仕事に関わる“数字”をつかんでおくことが大事です。ただ、会社が社員それぞれの仕事の成果をまとめて“数字”で表すために用いる「会計」について学ぼうとしても、その専門性の高さが壁となり、ついつい及び腰になりがちです。そんな会計ともうけのしくみを、江戸時代の丁稚を主人公にストーリー仕立てで分かりやすく解説するのが、書籍「江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本」です。

この本の著者である公認会計士の眞山徳人氏と、会計に関する著作を含め30冊以上を世に送り出す公認会計士の平林亮子氏が、社会人なら知っておきたい会計の知識を楽しみながら身につける方法を4回にわたって紹介するのがこの対談。営業パーソン、バイヤー、マーケッター、生産管理担当など、管理部門以外の人にも即効性のあるヒントがいっぱいです。(聞き手:『江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本』編集担当 蔵枡卓史氏)


自分の給料を“会計視点”で見てみると

―― 新社会人の最大の関心事といえば、やはり給料ですよね。この給料についても、会計視点でみることで、考え方が変わってくるものなのでしょうか。

Photo 眞山徳人氏

平林氏: 眞山さんは自分の給料について考えたことありますか?

眞山氏: 自分の給料というより、どれだけの案件を受注した場合に何人の部下を養えるか――ということを考えるようになりましたね。

 コンサルティングや監査の業界は、請求レートが“1時間あたり○○円”という形になっていますが、たとえ1時間1万円のコンサル料で働いている人でも、それがまるまる自分の給料になるわけではありません。若いころには、お客さんからもらっている額と給料のギャップが腑に落ちませんでしたが、立場が変わって営業もするようになって、「自分がこういう風に案件を取ることで、部下たちと一緒に働いていくことができるんだ」ということが分かってきましたね。

―― たしかに仲間うちでも、“給料の額が高い、低い”ということは話題になりますが、“会社の売り上げがこれだけある中で、なぜ自分はこれだけの給料をもらえるのか”という話には、なかなかならないですね。

眞山氏: 営業職の人はイメージしやすいかもしれませんが、直接お金と関わっていない部門で働いていると、なかなかそういう考え方ができないかもしれないですね。

平林氏: “給料が多い、少ない”という感想を持つのは、とてもいいことだと思います。少ないと思うなら“増やすためにはどうするか”、多いと思うなら“もっと働かなくちゃ”と考えますよね。ただ、サラリーマンの場合、給料は自分の働きだけでなく、“社内のさまざまな部門とのかかわりで決まる”ということは知っておいてほしいです。

 脱サラして会社を立ちあげた社長さんは、だいたい「会社の実務はこんなに面倒だったのか」と驚くんです。「売り上げを上げた後の雑務がこんなに面倒だと知っていたら、あんなに尊大な態度はとらなかった」という人がけっこういるんですよ。

 新入社員であっても、会社全体を見渡す目を持って“会社はたくさんの人がいないと成り立たない仕組みである”ということを時々思い出すようにしてほしいですね。そうすれば、会社の状態がいいときも悪いときも安定した給料をもらえるのは、大勢の人たちが関わる会社という仕組みに支えられているおかげ――と認識できて、やりがいも出てくると思いますよ。

―― それが分かっていれば、多少給料が安くても、くさらずやっていこうという気持ちになりますね。

Photo 平林亮子氏

平林氏: 会社員なら、たとえ今日の営業がうまくいかなかったとしても、来月から突然給料が出なくなくなるようなことはありません。病気になっても一定期間は雇用が保障されますし、1年くらい自分の営業成績が低迷したとしても、即解雇ということにはなりません。長い目でみれば自分にもいいときと悪いときがあるはずで、それでも安定した給料がもらえるというのは、会社という仕組みがあってこそ、なんですよね。

―― これまでの対談をお聞きして、一見、会計と関係なさそうに見える営業、企画部門などの人にとっても会計の知識が強力な武器になることが分かりました。著者の眞山さんは、どういう人に本書を読んでもらいたいと思いますか?

眞山氏: この書籍は、私が先輩たちから教わってきたことをまとめたものなので、それを若い人たちに伝えたいと思っています。社会に出ると、さまざまな局面で会計とかかわることになります。働いていて納得いかないことがあったり、不思議に思うことがあったりしたときに、手に取ってもらいたいですね。

 昇進したり、独立したりして立場が変わった時に読むと、また違った見方ができるはずなので、ずっと手元に置いてもらえるとうれしいですね。

なぜ、舞台が“江戸時代”なのか

―― 本書は現代のビジネスパーソン向けに書かれた書籍ですが、舞台は江戸時代に設定しています。あえて昔の設定にしたのはなぜですか?

眞山氏: 江戸時代を舞台にしたのは、最近の会計の複雑さを避けるためです。あまりに複雑だと、会社で自分がやっていることとお金が結びつかないので、複雑なルールのない社会を舞台に設定したほうがいいと思ったんです。

 ものを作って売りに行って、お金をもらってきて――というシンプルな商いをしている時代を舞台に、できるだけカタカナの専門用語を使わずに表現していますから、誰が読んでも、理解してもらえる内容になったかなと思っています。


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