ビジネスフレームワークに関する書籍はたくさん出ています。ところで、成果に結び付くように使いこなせていますか? 大事なのは自分なりのアプローチで使いこなすことです。
私が『最強フレームワーク100』なる本を出したのは2007年でした。この書籍は、世界のビジネスシーンで普遍性が認められた“思考の枠組み”を100個紹介するもの。当時はまだ、ビジネスパーソンの間で「フレームワーク」という言葉自体がそれほど浸透しておらず、異なる意味でとらえられることも多かったのを覚えています。
そのころ、自分の会社を興したばかりだった私は毎日のように提案書を作っており、資料作成の「効率性」アップと、課題や情報整理の「見える化」を目指して、いろんなフレームワークを採用していました。
ビジネスフレームワークは当時、経営学の難しい本や外資系コンサルタントの提案書などでお見受けする程度で、ネタ帳として一般ビジネスパーソンが活用できるようなものがありませんでした。そこで書籍にまとめてみたのです。ついでに同名のiPhoneアプリも作りました。興味があれば、インストールしてみてください。
おっと脱線しました。今回は、ビジネスで使える「フレームワークについて」です。
今やAmazonで「フレームワーク」を検索すると、それが入ったタイトルの本が10冊以上表示されます。プログラマー向けではなく、ビジネスフレームワークの本が、です。
この7年で「フレームワーク」がビジネスシーンに浸透し、一般的になったということなのでしょう。私の講演やセミナーでも「フレームワークを知っている、仕事で使ったことがある」という人が増えてきました。
一方で、フレームワークを知っているつもりでも、成果に結び付くように使えていなかったり、そもそも使い方が間違っていたり、フレームワークを過大評価したりする人が増えたのも事実です。
考え方の「パターン集」であるフレームワークは、情報整理をする場合には大変便利です。1つのコンセプトに基づき、多くの情報を無作為に収集するムダを省き、分類し、整理整頓が効率的に行えます。「モデル化」とも言えるでしょう。
しかし、変化の激しいこの時代に、数年前、数十年前に作られた「パターン」や「モデル」が、私たちの“今の”課題や状況に当てはまる保証はありません。また、フレームワークから取りこぼされるデータに隠された突破口がある可能性も否定できません。フレームワークを使いつつ、本当にこのアプローチで良いのだろうか、と疑う気持ちも必要です。
真のフレームワーク使いになるのであれば、自分自身でフレームワークを修正したり、作成したりすることです(前述のアプリには自作フレームワークを登録できる機能がありましたが、ユーザー同士で共有する機能がなかったのが心残りです)。
一般的なフレームワークに自分自身の仕事を落とし込み、腹に落ちるまで徹底して使い、自分なりのアプローチを試してみましょう。“2×2のマトリックス”に答えがあるわけではありません。
「フレームワークは補助線にすぎない」とよく言われます。補助線を参考に、実際に線を書き込むのは私たち自身です。何も高名な学者が提唱しているフレームワークを身に付けることに価値があるわけではないのです。
フレームワーク自体より、フレームワーク的なアプローチ、思考方法を身につけることが、多くのビジネスマンにとっては重要で価値のあることなのです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
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