他人の気持ちを想像するあせらない練習

人は自分のことに精一杯で、他人のことをいちいち評価するほど暇ではありません。だから、他人の目を気にしてあせる必要はありません。他人の気持ちを想像して行動することが大事なのです。

» 2014年06月30日 11時00分 公開
[斎藤茂太,Business Media 誠]

集中連載「あせらない練習」について

本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。

 ・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
 ・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される

不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。

本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。


 他人の目が気になって、思い通りに行動できない人は相当数に上ると思います。私のところに相談に来る人を見ても、それは明らか。悩みの発端が「人の目」であることが大多数を占めます。

 「こんなことを言ったら、バカにされそう」
 「こんなことをしたら、人を困らせることになりそう」
 「みんなと違うことをするのは、世間体が悪い」
 「周囲の人と違う意見だったら、のけ者にされるかもしれない」

 など、自分の言動が周囲に与える影響ばかりを心配して、自分らしいふるまいができなくなってしまう。その結果、ストレスをためて苦しんでいる人が多いのです。そういう人がまず認識すべきことは、第一に、人は自分のことに精一杯で、他人の様子や言動を逐一評価するほど暇ではないということです。

 もちろん、自分の言動によって相手が不機嫌になったり、軽蔑の眼差しを向けたり、苦笑したりすることは多々あります。しかし、それも一瞬のこと。次の瞬間にはもう、忘れている場合がほとんどです。さほど気にする必要はありません。

 第二に、いくら想像しても、相手の気持ちなど分かるわけはないということです。

 自分では喜んでもらえると思ってしたことが裏目に出たり、逆にこんなこと言ったら怒るかな? と思いつつもしたことが気に入られたり。実際問題、自分の言動を相手がどう受け取るかは、行動してみなければ分からないのです。

 だから、あせらず、怖がらずに、自分の思い通りに行動すればOK。それで気分を害することがあっても、

 「この人は、こういうことを言うと、こんな反応を見せるんだ」

 と学習できます。もちろん、うまくいけば、

 「人はこういうことをされると喜ぶんだな。私の予想通り!」

 と自信が持てます。

 そうしてさまざまな人の反応を学習しながら、それを経験値としていけば、人づき合いのテクニックも磨かれるというものです。周囲の評価を気にして行動に二の足を踏むのではなく、実際に行動を起こして相手の反応を確かめてみる。その場数を踏むことが大切なのです。

 周囲の評価を恐れずに、自分の思い通りに行動してみてください。その結果がどう出ようとも、相手が見せた反応はすべて「よりよい人づき合いをするための情報」として自分のなかにインプットされます。

 その積み重ねが、「他人の気持ちを想像して行動する」という人づき合いの極意にも結びつき、あせらない自分になれるはずです。

(次回は、「嫌われている人と上手に付き合う」について)

 →連載「あせらない練習」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

斎藤茂太(さいとう・しげた)

1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。


関連キーワード

原因 | パニック | 不安 | 習慣 | ストレス


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ